2026-05-01から1ヶ月間の記事一覧
FREDERIC MALLE EN PASSANT(2000年) 調香師:オリビア・ジャコベッティ おすすめ度:★★★★☆ 公式HPより 近年、注目のライラック。 そんなライラックの香りの中でも、発売から四半世紀を迎えた「アンパッサン」は、もはや古典的存在といえるかもしれない。ま…
第五回:渚の境界線 鼻腔の奥に劇薬が侵入した瞬間、真壁は、自分の足元にあるはずの「現在」という床が消失したのを感じた。 吸い込んだのは、単なる香りではなかった。それは意識の深層に突き刺さる重い楔(くさび)だった。アトリエ渚の、あの無機質な…
第四回:志乃の処方箋 志乃が手に取ったのは、ガラス製の細い攪拌棒だった。書き換えられ、黒いインクで汚れた処方箋。その処方箋を見つめながら、既に彼女の感覚は完全に指先へと転移していた。 動きには一切の淀みがない。ライブラリーの中から、重厚な…
第三回:記憶の部品 その写真は、真壁の指先の熱を吸い取っていくかのように冷たかった。自室の机に置かれた「結衣」の姿。五年前、光の中に溶けかけていた彼女の輪郭は、アトリエ渚で嗅いだあの匂い――古い紙束と、乾ききった潮風の記憶――と重なった瞬間、暴…
CHANEL N゚5 オードゥ トワレット(2026年)※オリジナルは1924年 調香師:オリビエ・ポルジュ おすすめ度:★★★★☆ 公式HPより N°5 オードゥ トワレット(以下EDT)が新しく生まれ変わると聞いて、「何を今さら」などとは全く思わず、逆にシャネルらしいなと納…
第二回:言語化する傍観者 二度目にアトリエ渚を訪れたとき、真壁の足取りは前回よりも重かった。蔵前の路地に入ると、肌に纏わりつく湿度が、まるで記憶の澱のように重く感じられる。一度自覚してしまった「空白」は、埋めようとすればするほど、その縁から…
第一回:境界の潮目 アトリエ渚は、蔵前にあった。隅田川沿いの通りから一本入った路地。川そのものは直接見えないが、空気の重さと風の巡り方で、水面が近いことは肌が知っている。潮の満ち引きに呼応するように、街の湿度は刻一刻と形を変えていた。真壁は…



