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キリアン:ブラック ファントム メメント モリ

KILIAN

BLACK PHANTO ”MEMENTO MORI”(2017年)

調香師:シドニー・ランセスール

おすすめ度:★★★★★

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 (公式HP)

 

年々、甘さの強い香りが好きになってきている。
もちろん、嗜好の幅が広がってきたこともあるが、それ以上に、男性でも使いたくなるような素晴らしいグルマンフレグランスが増えてきたことの方が明らかに大きい。

 

そして、キリアンのカルぺ ノクテム(今を生き、今日を楽しむ、夜の世界)コレクションのブラック ファントム メメント モリは、男性に向けたグルマンウッディの傑作だと感じている。

 

トップはウッディ・グルマン。

スプレーすると、ビターなチョコレート、そしてコーヒーの苦みによる黒い刺激と、アーモンドミルクの白っぽい甘さ。その黒と白から飛び出すようにラム酒っぽい香りが弾ける。本当にセクシーで男らしいオープニングだと思う。

 

ミドルはグルマン・ウッディ。

トップから大きな香りの変化はなく、チョコレートとコーヒーの苦さは深みが増し、アーモンドの甘さはキャラメルの焦げ感が加わっていくことで、苦味よりも甘さが前に出てくるようなイメージ。奥からはアーシーなパチョリが、キャラメルの甘さをさらにローストしたナッツのように仕上げていく。この甘味と苦味をラムがまろやかにまとめているような香り。

 

ベースはウッディ・グルマン。

キャラメルの焦げ感が抜け、ミルクのコクが加わることで、砂糖のような白っぽい甘さに変わる。チョコやコーヒーの苦味は、力強いベチバーに包まれることで、白い甘さと黒い苦味のコントラストがより明確になっていく。
最後は鋭いサンダルウッドが、全体をより黒色に染めていく。

 

持続時間は、甘さが前に出るミドルまで3時間くらい、そこからビターなウッディが主体となる香りは8時間程度続く。
秋から冬にかけて、男らしいビターな温もりと、引き込まれるような甘さのコントラストが恋しくなる。

 

ビターorスイート、ブラックorホワイト、それぞれがはっきり主張している。グレーとしてまとまることを拒否したような香りで、実に男らしいと思う。
その結果、クールな表情と、とろけるような甘さの二面性を持った、稀有なグルマンウッディの香りに仕上がっている。

 

私のなかでは、名香タバコバニラと重なる。ブラックファントムはキリアン版のタバコバニラだと思う。それくらい大好きな香りだ。

タバコバニラの方が甘さが強く、そしてウッディも柔らかく、最後はバニラがタバコの葉の色の染まっていくような包容感がある。大人の香りだと思う。

 

一方、ブラックファントムは、アロマティックなコーヒーの苦味が、まるでタバコのようなベチバーに包まれることで柔らかくなっていくと思わせつつ、暗いサンダルウッドがダークな印象に戻すことで、砂糖やバニラの白さがより引き立つ。

その結果、クールやスタイリッシュというよりも、白黒をはっきりさせたような、もっとストレートに男を感じさせるようなグルマンウッディの香りだと思う。

まさしく、スカルが装飾された漆黒のボトルボックスに、白い光が当たったようなイメージに近い。

 

メメント モリは「死を忘れるな」という意味。

人はいずれ死ぬ、だからこそ生が輝く。

対極の香りを重ねることなく、対極のまま置くことで、メメント モリというテーマが伝えたかったのではないだろうか。

「人を酔わせ、夜のように黒く、地獄のように熱く、愛のように甘い」フレグランス。