KILIAN
BAMBOO HARMONY(2012年)
調香師:カリス・ベッカー
おすすめ度:★★★★☆
(公式HPより)
キリアン・ヘネシーが創り出す香り、そして世界観を偏愛している。
でも、人に薦めるのであれば、正直、あまりキリアンらしくない、このバンブーハーモニーが良いと思う。
キリアン愛好家である以上、キリアンにはもっとラグジュアリーで、もっと暴力的で、もっとセクシーで、もっと中毒性の強い、いわゆるキリアンだからこそなし得た香りが好きだ。
でも結局、それら個性の強い香りは使うシーンがかなり限定されてしまう。
逆に、このバンブー ハーモニーは、嫌われるにくい嗜好の良さと、飽きることのないほどよい個性と、使い込んでいける品質の良さを兼ね備えたと、まさに三拍子の揃ったとても優秀な香りで、キリアンらしい香りよりも圧倒的に使用頻度が高い。キリアンの中でもまずは手に取ってほしい一本だ。
トップはシトラス・グリーン。
スプレーすると、オレンジの苦みの強い甘さ、そこにベルガモットのみずみずしい酸味が重なる。それらシトラスミックスを、鋭いグリーンノートがまるで突き出してくるようなオープニング。
ミドルはグリーン・ウォータリー。
縦軸は突き出したグリーンのノートがバンブー(竹)のように硬さを加え、横軸はベルガモットの酸味とまぶしいネロリが広がっていき、さらに奥からは香ばしい白茶の香り。それら縦・横・底の個性を、ミモザの滴るようなフローラル感や、カルダモンのようなスパイスが、まるで竹茶(?)のように、みずみずしく、そして全体を凛と引き締めている。京都の竹林のようなイメージがしっくりくる。
ベースはグリーン・ウッディ。
そんなみずみずしい竹茶から、マテ茶の燻したような苦みが増していくが、フィグリーフの柔らかなグリーンノートや、さらにはオークモスの酸味が、ありきたりなムスクとは違う、すっきりとした清潔な香りにまとめている。
特に肌に乗せると、このグリーンが効いた柔らかさが増して、どこか昔使っていたシャンプーのような、心地よい懐かしさに浸りながらドライダウンしていく。
爽やかで、グリーンが鋭く立ち、さらにみずみずしさもあるため、春夏はもちろん、梅雨時もキレイに香ってくれる。
持続時間は4時間くらい。
シトラスやグリーンがメインの香調のわりに持続する方で、何よりも最後まで香りが崩れることなく、肌に溶け込むようになじんでいく点が素晴らしい。
また、残香をありきたりなムスクでまとめるのではなく、しっかりグリーン感を残したまま、ウッディシプレにまとまっていく点もとてもユニークで、キリアンらしいこだわりが感じられる。
元々、バンブーハーモニーは日本最古の物語、竹取物語に触発され、生まれた香りとのこと。残念ながら、私にはどのへんが竹取物語かは分からない。ただ、いつ使っても、気持ちが落ち着いていく懐かしさがあり、それでいて先の三拍子揃った香りのため、気がつくと手を伸ばしてしまう。
私にとって、もっとも身近なキリアンの香り。