KILIAN
GOOD GIRL GONE BAD Eau Fraîche(2020年、限定品)
調香師:アルベルト・モリヤス
おすすめ度:★★★☆☆
(公式HPより)
キリアンの代表作グッドガール ゴーンバッド(2012年)。
良家のお嬢様が、淑女の装いを脱ぎ捨て、退廃的な側面を露わにしていく様をイメージした叙事的な香り。
そして、2020年に限定発売されたグッドガール ゴーンバッド オーフレッシュは、オリジナルにクールでアクアティックな香りを加えることで、夏向けにアレンジされた香り。
フローズンホワイトガラスの香水瓶をスプレーすると。
トップはフローラル・フルーティ。
果実感が強めのオレンジフラワーを、淡いココナッツのようなクリーミーな甘さで柔らかく包み込んだような香り。スプレーした瞬間はとてもオリジナルに似ている。
実際に肌に乗せてみると、プラムのような酸味が強調され、さらにオレンジの甘さが増すことで、ジューシーでトロピカルイメージの強いオレンジフラワーの香りに。
このトロピカルなオレンジフラワーの香りが、オーフレッシュの最大の見せ場で、とても常夏感溢れるオープニング。スプレーした瞬間、目の前には燦燦と輝く太陽、青々とした空、海の潮風が広がっていく。
ミドルはフローラル・ウォータリー。
上の方から、可愛らしいローズの甘さ、ジャスミンやオレンジフラワーのホワイトフローラル、そして奥から丸みのあるチュベローズの香り。それらフローラルブーケを、ウォータリーやココナッツで味付けしたような、みずみずしく透明感の強いフローラル・ウォータリーな香り。特にココナッツとチュベロースを組み合わせが夏っぽさを演出しているように感じる。肌に乗せるとウォータリー感がさらに増していく。
ベースはフローラル・ムスキー。
オレンジフラワーやジャスミンやチュベローズの余韻を、ウォータリーなムスクの淡い香りが優しく包み込む。最後はパウダリーなムスクと淡いサンダルウッドの香りが、熱で火照った肌のような余韻を残す。
ウォータリーなホワイトフローラルを、淡いココナッツムスクで仕上げた、夏にぴったりな香り。香調はみずみずしくライトな印象であるが、ベールのムスクやウッディが予想以上にしっかりとしているため、想像していた以上に香りが持続する。
ミドルまでは2時間程度、全体的には6時間程度持続する。
オリジナルと比較してみると、
オリジナルの方は、フルーティーやココナッツの甘さ(幼さ)と、華やかなフローラル(大人っぽさ)の対比がはっきりしており、最初ははっきりしていた幼さが、徐々に大人っぽさと交錯し、やがて大人っぽさが前に出ていく。この香りの移ろいがとてもコンセプトに合っていると感じる。
一方、オーフレッシュは、オリジナルの要素は残しながら、特徴だった甘さやフェミニンな艶感を抑えて、みずみずしさやフレッシュ感が強められている。
真っ青な海に反射するギラギラした太陽の日差しのなかで、潮風に乗ったカラフルな花々の香りに囲まれて、若い女性が弾けるような肌を惜しげもなく周囲にみせながら、ジリジリと肌を焦がしているときの甘酸っぱさ。まるでバカンスを楽しんでいるような、とても叙景的な香りに仕上げられている。大昔に、ドキドキしながら観た「青い珊瑚礁」のブルック・シールズのイメージ。
しかしながら、この香りが楽しめるのはミドルまでで(グッドガール部分)、ベースのムスクやウッディに移行するにつれて、むしろ乾いたような重さが目立ってしまう(ゴーンバッド部分)。正直、惜しい、もったいないなと思う。
個人的には、このベース部分をもっと軽くして、オリジナルのサマーバージョンを、まるでコロンのように楽しめる香りであれば尚良かったのにと感じてならない。