GUERLAIN
FLORAL ROMANTIQUE(2011年)
調香師:ティエリー・ワッサー
おすすめ度:★★★★☆
(公式HPより)
現代女性をイメージして創作された、エリクシール シャルネル コレクション。
なかでもこのフローラル ロマンティックは、男性には触れがたいオーラがある。完璧なまで、女性のためだけの香り。
そして、こういう香りを知ってしまうと、ああ、女性のフレグランスはうらやましいなと嫉妬してしまう。
ロマンティックなフローラルの美しさは、男性が実装するのには、非常に壁が高い。
例えばそこに、フレッシュさ、華やかさ、ワイルドさ、甘さ、辛さ、苦さ、ナチュラル感などアクセントが見つけられれば、よし、この壁を垂直登攀してみようかと意欲もわくけれど、シンプルに美しいとなれば、世の男性は黙って眺めるしかないのではと思う。
そんなフローラル ロマンティックはどんな香りかというと、
トップはシトラス・フローラル。
透き通るようなみずみずしいマンダリンと、美しいネロリの高音。フレッシュで明るいシトラス・フローラルの香り。一瞬、ティーのようなベチグレンのグリーンがアクセントとして仄かに香るものの、それらをムスクとは一味違う、アンブレットシードのナチュラルな白さが、ベールのように包み込んでいく。そう、溢れんばかりの美しさを、まるでウエディングドレスのベールで隠したようなオープニング。
ミドルはフローラル・グリーン。
ネロリウートルノワと同じ雰囲気のネロリに、純白という言葉がぴったりのユリがその姿を表す。さらにフレッシュな酸味を漂わせるティアレフラワーや、カーネーションの硬さ、そして眩しいイランのみずみずしさ。全体的には純白なユリが際立っているため、可憐で繊細なホワイトフローラルの香りでまとめられていると感じる。そこにペチグレンのスモーキーなティグリーンがフローラルの芯にような役割をはたし、意志の強さが感じられる。次第に官能的なジャスミンが、その存在感を増していく。
ベースはスイート・ウッディ。
ユリの白さ、ティアラフラワーの酸味、ジャスミンの甘さに、フローラルとは異なる白い甘さが加わってくる。
この香りは何と表現すれば良いのだろうか。スモーキーなティの湿気や、シプレのような柔らかさに、和三盆のような白っぽくなめらかな甘さ、そしてセダーの乾いたウッディと、薄いムスク。ホワイトフローラルを主旋律に、この白い甘さやウッディが和音のように重なったままドライダウンしていく。
ホワイトフローラルの様々な表情を見せながら、4時間程度持続する。
みずみずしく、可憐なフローラルの香りで、春から夏にかけて似合うのではと感じる。
ゲランのホームページをみると「繊細で夢見る女性に向けた、優美でフレッシュ、天使のような清らかさと温かみを備えた香り」とある。
確かに弾けるようなフローラルを、繊細なベールで包んだことで、天使のような清らさを与えたような香りだと思う。
とはいえ、ゲランの最高峰エリクシールシャルネルだもの、もちろんそんな簡単な香りではない。
表面は天使のような繊細なフローラル、そして同じく白イメージのベース。でもこのフローラルが白色を装ったベースと重なることで、フローラルの酸味や官能的な甘さが押し出されていく。そしてこのフローラルが、まるで女性の体温や汗のイメージと重なり、少しドキドキしてしまう。純白の天使から、時折垣間見せる女らしさ。とても妄想が広がる香り。
もうまもなく、このエリクシールシャルネルがなくなってしまうのは、男としてもとても残念に思う。