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エラケイ:サガノの詩

ELLA K

POÈME DE SAGANO(2017年)

調香師:ソニア・コンスタン

おすすめ度:★★★★☆

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(公式HPより)

 

コロナ禍で変化の乏しい日常が続いている。さすがにそろそろ旅に行きたくなる。

そんな時、エラケイのフレグランスを使ってみるのはどうだろうか。

 

エラケイは旅を愛する調香師ソニア・コンスタンによるメゾンフレグランスブランドで、彼女が世界中を旅するなかで受けてきた感銘を、ポエムと共に香りに託している。

そしてひとつひとつの作品に、訪れた地とそこで湧き上がった想いのシンボルとなる香料を配合しているのが特徴だ。

 

このサガノの詩は、舞台は京都、彼女が訪れた嵯峨野の竹林で得たインスピレーションを、ポエムでこう表現している。

遠くの地で、優しい緑の葉にうずもれて、目を閉じる。
荘厳な竹の息遣いを感じる・・・
竹の葉が空高く、太陽を覆うように茂り、
こずえがゆっくりと左右に揺れて、
風と共に私の魂を運んでいく。
私のうなじに感じるあなたのかすかな息遣い。

 

そしてその香りは、素晴らしいシトラス・グリーン・ハーバル、そして、日本への愛情がほとばしる香りだと感じる。

 

まるで文鎮のように重たいキャップを外し、スプレーすると、

トップはシトラス。

まず鼻に付くのは、ユズの和柑橘らしいピリッとした苦み、そしてみずみずしいベルガモット。少しずつグレープフルーツの甘さを感じる。

サガノの詩は特にこのシトラスミックスが秀逸で、スプレーした瞬間、その世界観に引き込まれる。なかでもユズのグリーンのほろ苦さが、他のシトラスと異なる雰囲気を創り出している。近年、多くのフレグランスでユズを見かけるようになったのが理解できる。

尚、ベルガモットはインテグラルと呼ばれる高濃度ベルガモットが使用されているとのこと。

 

ミドルはグリーン・ハーバル。

ユズやグレープフルーツの爽やかな果皮感を残しながら、ユーカリやミントのフレッシュグリーンが香る。グリーンティーにも感じるウォータリーな甘さを添えて。少しペアのようなフルーティな甘さもほんのり香り、抹茶のようにも感じる瞬間もある。

 

ベースはグリーン・ウッディ。

ミントやグリーンティやペアが淡くなっていき、そこにライトなウッディ、ムスクが加わった香り。ベースのリーフグリーンのような青っぽさ、ベアの芯のような硬さ、乾いたウッディの組み合わせが、なるほど確かに竹っぽい。この淡い香りが漂うように、そのままドライダウンしていく。

 

持続時間は、キリッとしたシトラスグリーンが1時間ちょっと、そこから竹林のような淡いグリーンが4時間程度持続する。

エラケイにはトップ・ミドル・ベースという考えがなく、

シトラス~ ベルガモット、グレープフルーツ、ユズ
フレッシュ~ ナナミント、ユーカリ、抹茶、バンブー

とある。

前半のシトラスグリーンがシトラス、後半のグリーンがフレッシュにあたるのかもしれない。

 

かいでいて気持ちが良いシトラスミックスと、涼しげなグリーンを組み合わせた香りのため、特に夏に向いていると思う。

夏イコール海ではなく、まさに嵯峨野の竹林の中にいるような、葉に遮られる太陽の光、凛とした佇まいに感じられる荘厳な空気、静謐な世界に包まれたい時に使いたくなる香り。

 

このサガノの詩は日本を舞台にした香りであるが、実はエラケイのブランドそのものにも多くの日本が採用されている。

まず、それぞれの香りを表現したシンボルマークは、ソニア・コンスタンが京都で出会った日本人イラストレーターの中田仙次郎氏のイラストが使用されている。

そしてエラケイの「K」にはトンボが使われている。実はなぜトンボを選んだのか、ソニアさんに直接聞いたことがある。トンボは前にしか飛べないため、常に前進する。トンボは武将の兜にも使われるほど、勇気と勝利の象徴とのこと。

 

サガノの詩の香りのフレッシュな香りに包まれる。

その気持ちよさを味わうと同時に、そろそろ変化の乏しい日常を終わらせ、前に進みたいと強く願う。