フレグランスアッセンブル

フレグランスの香りの変化を解析するサイト

ゲラン:ジョワイユーズ チュベローズ

GUERLAIN

JOYEUSE TUBÉREUSE(2017年)

調香師:ティエリー・ワッサー、デルフィーヌ・ジェルコ

おすすめ度:★★★★☆

 

f:id:captain_dora:20211023164846p:plain
f:id:captain_dora:20210705184702p:plain

画像:公式HPより

 

ゲランの最高級ライン、ラール エ ラ マティエール。

そのコンセプトは、アート&マテリアルのいう名のリュクスの香り。稀少な花々と極上の素材への情熱を、大胆かつ感性豊かに表現したコレクション。

なかでも、このジョワイユーズ チュベローズは、調香師の感性が存分に発揮された香りだと思う。

 

初めてジョワイユーズ チュベローズをかいだ時の衝撃は忘れられない。

こんなチュベローズ、かいだことない。

 

それまでチュベローズに対して、妖艶で官能的、スパイシーでエキゾチック、土のような渇いた、女性的なフローラルな香り。そしてフレグランスでは、その官能性を深めるため、スパイシーをはっきりさせたり、クリーミーやウッディで奥行きを与えたような香りが多いと認識していた。

しかし、ゲランが提示してきたチュベローズは、みずみずしく、上品で可憐、そして清潔なフローラルの香り。チュベローズにはこういう表現もあるのかと、心底驚かされ、その感性に感動した。

 

ジョワイユーズ チュベローズは、「あでやかで魅惑的なチュベローズに新たな解釈を加えて、思いがけないフレッシュな一面を披露した」香り。

 

トップはフローラル・グリーン。

まずスプレーすると、爽やかなみずみずしいグリーンと、まるでユリの花束に顔を埋めたような強い花粉を思わせる香り。フローラルとグリーンの狭間にゲランらしいバニラの甘さがフワッと香り立つ。

 

ミドルはフローラル・グリーン。

アップルのような酸味を増したフレッシュなグリーンノート。そして、トップのツンツンしていた花粉のようなフローラルが、まろやかなみずみずしいジャスミンサンバックに移ろっていく。

そこから酸味とやや土っぽいチュベローズの個性が増していくが、奥からは上質なバニラの甘さを漂わせることで、フレッシュでありながらとても女性らしい上質な香りになっていく。「水をたっぷり含んだ摘みたての花」という表現がぴったりだ。

 

ベースはバルサミック・ウッディ。

ミドルのフレッシュなチュベローズが淡くなることで、トップから姿を見せていたバニラと、ほんのりサンダルウッド、そしてソープ調の清潔なムスク香りに包まれる。

 

とてもフレッシュなホワイトフローラルの香り。持続時間は5時間程度。


チュベローズは秋冬の香りと勝手に思い込んでいた。

ところが、このジョワイユーズ チュベローズは、みずみずしいグリーンと個性的なチュベローズをバランス良くまとめ、それぞれの長所でそれぞれの短所を補うことで、非常に嗜好の良いフローラルグリーンの香りに仕上げられていると思う。

具体的には、グリーンにフルーティなフレッシュ感を、チュベローズにはユリの無垢な美しさやジャスミンのフローラルなみずみずしさを加えて、さらにバニラの白い甘さや、清潔なウッディムスクで包み込んでいる。フレッシュで、純白なフローラルの美しさを堪能できる、女性のための香りだと感じる。

 

ゲラン公式ホームページには次のように紹介されている。

軽やかで輝くようなチュベローズ。この上なく無垢で、ハッとするほどフレッシュな香り。水をたっぷり含んだ摘みたてのチュベローズを採用することで、これまでになかったフレッシュさや透明感を引き出すという大胆なアプローチを展開。ジョワイユーズ チュベローズは、従来は艶やかで官能的なイメージの強いホワイトフラワーの女王に対する、真のオマージュなのです。

いつ読んでも、ラール エ ラ マティエールの文章は素晴らしい。

 

春から夏にかけて、まるで朝露に濡れたような、みずみずしいホワイトフローラルの香りに包まれてみるのはいかがだろうか。きっと幸福「Joyeuse」なひと時を演出してくれるのではないだろうか。