BOND NO.9
THE SCENT OF PEACE(2006年)
調香師:ミッシェル・アルメラック
おすすめ度:★★★☆☆
(公式HPより)
ボンド ナンバーナインは、ニューヨークへのオマージュを表して創られたフレグランス。
そのミッションは、パフュマリーを芸術品として位置づけること。ニューヨークにある地域、それぞれすべての象徴として"香り゙を位置づけることとしている。
そんなボンド ナンバーナインの圧倒的な一番人気の香りがこのセント オブ ピースだ。
上品で、繊細なフルーティフローラルの香り。フルーティフローラルの香りにありがちな安っぽさはなく、男女共にまず嫌われることがない香りだと思う。
トップはシトラス・フルーティ。
グレープフルーツがパッと弾け、ペアやピーチのようなジューシーなフルーティな甘さを、キリッとしたカシスのみずみずしさを与えると同時に、引き締めているようなイメージ。とても気持ちが良い香り。
ミドルはフルーティ・フローラル。
ペア、ピーチのグリーンフルティな甘さを残しながら、ミュゲが繊細に香る。このミュゲが、常にフルーティに寄り添って、フルーティを香りを清潔に着飾っているように映る。
ベースはムスキー・ウッディ。
ミドルのフルーティフローラルな甘さを残しつつ、柔らかいムスクや乾いたセダーウッドと香り全体をそっと包んでくれるような香り。ミドル以降は大きな変化はなく、青イメージの香りが、徐々にムスクで薄まりながら、ドライダウンしていく。
持続時間は3~4時間くらい。ベースはかなり繊細なムスクで、半日経ってもフワッと香ることもある。
シトラスのフレッシュ感や、フルーティのみずみずしさが溢れる香りのため、春から夏にかけての日中に、とても使いやすい香りだと思う。
絶対に嫌われないような、完璧な嗜好性を備えた香りで、すれ違いざまに、上品なシャンプーを思わせる、この嫌味のないフルーティフローラルの香りに遭遇すると幸せな気分になる。相手が幸せになる。ここがこのフレグランスの最大の強みではないだろうか。
全体的な構成をみると、シトラスやグリーン、ジューシーなフルーティを中心とした、とても若々しい香りを、大量のムスクや青っぽいミュゲでコーティングしたような、とても人工的な香りだと思う。
特にカシスやミュゲの青さを、トップ・ミドル・ベースをそれぞれ別のムスクのベールで何層にも覆うことで、あのボトルのようなイメージの香りが創り出されている。
セント オブ ピース=平和の香り。
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件を受け、平和を願うために生まれたフレグランス。ニューヨークの地域などの名前が多いボンド ナンバーナインのなかでも、特にメッセージ性の強い存在だと思う。
平和の香りとはどんな香りだろうか。平和は自然にわいてくるものではなくて、常に人々の手によって、たゆまぬ努力によって創り出されるものだとしたら、この人工的な香り=平和の香りというのも理解できる。