FUEGUIA 1833
ENTRE RIOS(2016年)
調香師:ジュリアン・ベゼル
おすすめ度:★★★★☆
(公式HPより:右)
エントレリオスは今年の夏に向けて、ラインナップに加えた1本だ。
そして、エントレリオスに対する期待は、夏に活躍するウッディの香りで、その期待に応えてくれそうだと感じている。
フエギア 1833は、2010年に南米アルゼンチンのブエノスアイレスでジュリアン・ベデルにより創業された。生産時に入手可能な天然原料のみを厳選しているため、エディションごとに、香りに「ゆらぎ」がうまれるとしている。
そして、ベデル氏の生誕地ブエノスアイレスや、彼が幼少期を過ごしたパタゴニアがインスピレーションの源泉で、調香もベゼル氏自身が行っている。
さらにエシカルな視点も強く、新時代のフレグランスブランドだと思う。
このエントレリオスは、南米大陸特有の複雑な魅力に迫ったデスティノス コレクションの1品。
尚、フエギアは独自のアコードを作っており、このエントレリオスは、トニックノート(もっとも長く残り、美しい余韻を残す)はベルガモット、ドミナントノート(香りに個性を与え、香水のテーマを表現)はローズウッド、ローノート(つけた瞬間の香り)はレモンだ。
トップはシトラス。
スプレーすると、まずフレッシュなレモンが香り立つ。少し遅れてみずみずしいベルガモット。そしてハーバル調の硬くドライなウッディも感じられる。レモンは果皮感強め、ベルガモットはアロマティック感があり、そこにハーバル感も足されるため、クラシカルなメンズシトラスコロンのようなイメージに近いオープニング。
ミドルはアロマティック・ウッディ。
レモンの爽快感はすぐに飛び、レモン果皮の苦みを残しながら、ベルガモットとローズウッドがアロマティックな表情を見せる。やがてベルガモットが減退してくると、ベルガモットのグリーンの要素とローズウッドが重なることで、メタリックなウッディの香りに進んでいく。
ベースはウッディ。
メタリックなウッディに少しずつ湿ったアーシーな印象が加わっていく。最後はメタリックを残した、とてもドライなウッディでドライダウンしていく。
ベルガモットがメインのみずみずしいアロマティックな香りが1時間少々、そこからメタリック調を帯びたウッディは6時間以上持続する。
香調としては、シトラスアロマティックであるが、かなりウッディの存在感が大きい。ベルガモットのグリーン要素がローズウッドと重なることで、良い意味で金属的が出るため、暑い季節にこそ活躍するウッディの香りだと思う。
エントレリオスについて、公式HPでは「時は過ぎ去る出来事の川であり、一方が終わりならもう一方は始まりかもしれない。近くを見ると周囲は常に野性的で あり、シトリックの泉によりリフレッシュされている」と表現されていて、なるほどと感じる。
レモンでベルガモットの表情を作り、ベルガモットのアロマティックやグリーンの終わりの香りが、次のローズウッドに潤いや鋭さを与え、その野性味を引き出している。
人間の手で完璧に整えられた香りも美しい。でも、自然が持つ深みや荒々しさをそのままボトルに詰め込んだ香りも刺激的だ。
フエギアはその香りを、芸術と学術の小宇宙としている。
この夏、フエギアの独創的な世界観を堪能したいと思う。まずはこのエントレリオスから。