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グタール:オーダドリアン オードトワレ

GOUTAL

EAU D'HADRIEN EDT(1981年)

調香師:アニック・グタール、フランシス・カマイユ

おすすめ度:★★☆☆☆

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画像出典:公式HP

 

清々しいレモンの香りに包まれたい。それもほんの一瞬でいい。

真夏の朝、このような要望が生まれてくる。

オーダドリアンのレモンの香りは、数多あるレモンの香りの中でも、群を抜いて好きな香り。

ただし、文字通り本当に一瞬で、1分満たない。その後、余韻すら楽しめない。

まるで、このフレグランスの要素のすべてをその1分に凝縮させたのではと感じるほど、1分過ぎてからは階段を転げ落ちるが如く、見事なまでの崩れっぷりは、逆に潔いとすら思える。

 

トップはシトラス。

スプレーすると、レモンのみずみずしい果実感と、ピリッと酸味、ほろ苦い果皮が三位一体となった、素晴らしいレモンの香り包まれる。この清々しいレモンのシャワーを浴びると、唸るような暑さや、絡みつくような湿気が晴れ、思わずうっとりしてしまう。

残念ながら果実のみずみずしさはほんの一瞬で消え、すぐにレモンやシトロン、グレープフルーツなどの果皮の存在が前に出てくる。

 

ミドルはグリーン・アロマティック。

まだ5分しか経過していないのに、トップの輝くような嗜好の良さはもういない。シトロンがクセが少し強めに主張し、そこにグレープフルーツのスパイシーグリーンの果皮と、乾いたレモンの粉っぽいアルデヒドをアクセントに加えたような香り。すでに清々しいシトラスは乾ききっている。

さらに森林を思わせるサイプレスのすっきりしたウッディが加わることで、一気にメンズ感が増す。このシトロンとアルデヒドとサイプレスの組み合わせたグリーンアロマティックな香りに。肌に乗せるとここまでが30分程度。

 

ベースはシトラス・グリーン。

レモングラスを思わせるような残香に、マンダリンオレンジのモタッとした甘さが感じられる。そこに、ほんの少し明るいイランイランやソープ調ムスクが香るが、かなり残香感が否めない。そのままヘタっていく形で消えていく。持続時間は2時間程度。

 

つけた瞬間に限定するならば、このオーダドリアンを超えるレモンの香りはないと感じている。それくらい素晴らしいレモンの香り。

そのため真夏の朝、シャワーを浴びた後に、この弾けるような爽快なレモンに酔いしれたい。そんな衝動に駆られれる。そして、オーダドリアンをスプレーすると、1分間は至福の時間を楽しませてくれる。ただし、そのシトラスの果皮感やアロマティックな残香がまあまあ強いことが難点だと思う。
で結局、使う目的が似ていて、さらに10分は楽しませてくれ、そして残香が鼻に付かない、4711オリジナルに手を伸ばすケースが多い。

 

オーダドリアンはアニック グタールの代表作であり、時代を超えて誰にでも愛される上品な香り。確かにとても嗜好の良いレモンの香りは嫌いな人は少ないと感じる。クラシカルと可憐さを合わせたボトルデザインはとても可愛らしい(メンズ用のスクエアボトルは普通)。

 

オーダドリアンは「一日の中で最も暑い時間には、レモンの木のやわらかな木陰に腰を下ろし、『ハドリアヌス帝の回想』を読みふけりたい。トスカーナの焼けるような太陽と眩しい日差しが、サイプレスの木々が立ち並ぶ高台に降り注いでいる様を表現した、爽やかな香り」とある。

なるほど、木陰でレモンの実だけでなく、木々や葉の香りを楽しむことができれば、『ハドリアヌス帝の回想』も読み進めることができると思う。でもオーダドリアンは、あまりにスプレーした瞬間のレモンの果実感が素晴らしすぎて、1ページ読むとおそらく、またスプレーしたくなるような香り。