フレグランスアッセンブル

フレグランスの香りの変化を解析するサイト

ルイ・ヴィトン:ル ジュール スレーヴ

LOUIS VUITTON

LE JOUR SE LÈVE(2018年)

調香師:ジャック・キャヴァリエ

おすすめ度:★★★★☆

 

f:id:captain_dora:20210812113812j:plain
f:id:captain_dora:20210812113823j:plain

画像出典:公式HP

 

ルジュールスレーヴは、ルイヴィトンのフレグランスの第8作目にあたり、日本での快進撃はこの香りから始まったと感じている。

というのも、2016年に登場した初期7作品は、どれもレザー調をアクセントとしたキャラが立った香りで、日本人がもっとも好きなシトラス系や、嗜好性重視の香りがなかった。日本からジャック・キャヴァリエに、シトラスを効かせた香りをリクエストしたと聞いたこともある。

そうして発売されたルジュールスレーヴは、明らかに日本のマーケットを意識したような香りで、その名前「夜明け」のとおり、シトラス問題を解決するだけでなく、新たなファン層を開拓する布石となった。ご多分に漏れず私も、フルボトルで買った最初のヴィトンフレグランス。

 

ヴィトンが織りなす夜明けの香りとは。

トップはシトラス・グリーン。

ジューシーなオレンジやベルガモットを、少し果皮感の強いグレープフルーツやキリッとしたカシスが引き締めているような香り。そしてこの香りのキー素材とも言えるマンダリンが、爽やかなシトラスに鮮やかな色彩と、硬いグリーンにみずみずしさを与えることで、魅力溢れるシトラスミックスの香りに仕上げられている。

 

ミドルはフローラル・グリーン。

トップのシトラスは、オスマンサスの甘さを加わることで明るさが増し、さらにジャスミンサンバックのみずみずしいフローラル感が合わさることで透明感が増していく。もちろんシトラスの爽やかさは残っていて、シトラスとフローラルが見事に調和している。
水気のある締まったグリーンも、ミュゲやマグノリアのフローラルに移ろうことで、フローラルの厚みを持たせながら、みずみずしい凛とした表情を続いている。シトラスの爽やかさや甘さ、グリーンの清潔な面影を残したまま、透明感のあるホワイトフローラルで包み込んでいるような、まず嫌われることのない鉄板の香りだと感じる。

 

ベースはウッディ・ムスキー。

やがて透明感のあるフローラルグリーンが少しずつ淡くなっていき、その香り立ちをウッディムスクが持続させたままドライダウンしていく。

 

ミドルのみずみずしいフローラルグリーンまでが2時間くらい続き、この香りを淡いウッディムスクで6時間近く持続させていく。

 

夜明けの名に相応しい「夜を突き抜け、新鮮な幕開けを予感させてくれる太陽の光」をイメージした香りで、春から夏の日中にとても似合う香りだと感じる。

 

ジャック・キャヴァリエが、ルジュールスレーヴで初めて使用したシチリア産マンダリン。彼にとってこのマンダリンは奇跡の果実とのことで、以後、ヴィトンの多くのフレグランスでも採用されることとなる。

また、ルジュールスレーヴでは、初期7作のような厳選された上質なマテリアルの骨格がかなり色濃く出ている香りに対して、マンダリンがそれほどはっきり主張してこない。むしろマンダリンのシトラスやグリーンが、オレンジの甘さや、フローラルのみずみずしさを引き立たせ、調和させた香りに仕上げられている。ルジュールスレーヴが成功した結果、一部シリーズを除き、初期7作のようなマテリアルがしっかり主張してくる香りではなく、調和させた香りしか出てこなくなったのは、少し残念でもある。

 

ルジュールスレーヴは、ジャック・キャヴァリエが過ごしているグラースでの夜明けのからインスピレーションされた香りとのこと。
「毎朝、海に面した寝室で僕は目覚めます。窓の向こうに海が見え、遠くにはコルシカ島が。海の蒼、太陽の赤……こんな目覚めに、何もかもが可能なんだ、というとてもポジティブな気持ちになれるのです」
夜というトンネルを抜けると新しい一日が始まる。朝はどんなときでもポジションだ。そんな願いを感じさせてくれる香り。