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ル ラボ:ベ ローズ 26

LE LABO

BAIE ROSE 26(2011年)

調香師:フランク・フォルクル

おすすめ度:★★★★☆

 

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画像出典:公式HP


シカゴのシティエクスクルーシブ、ベ ローズ26。

この「ベ ローズ」とはフランス語でピンクペッパーの意で、ベ ローズ26はピンクペッパーを再解釈することで、ユニークなローズの香りに仕上げられている。

 

トップはスパイシー・アルデヒド。

スプレーするとまず、力強いピンクペッパーが香ってくる。他のフレグランスにあるような、ピリッとしたパウダリー的なアクセントではなく、皮ごとすり潰した硬さや鼻を刺す辛みが強い、主役然としたピンクペッパーの香り。ここにアルデヒドの酸味が絡まることで、どことなく子供の頃に食べた梅ミンツの記憶と重なる。奥からはブラックペッパーの焦げたようなスパイシーな刺激が顔を出してくる。

 

ミドルはフローラル・スパイシー。

その梅ミンツのような辛みや酸味に、エレガントな真っ赤なローズがぴたっと重なってくる。あまりにもぴたっとはまるので、例えるならばエナメルでコーティングしたローズのように見える。燃えるようなローズの赤色に、エナメルのようなツヤ感がある、美しいけどどこか人工的なローズの輝き。

やがて、エナメルローズの奥から、ブラックペッパー、さらには湿ったクローブの苦みが、少しずつローズの赤さを焦がしていくように、あの人工的なツヤが剥がれることで、地のナチュラルなローズが見えてくるようなイメージ。この拮抗がしばらく続く。

 

ベースはフローラル・ムスキー。

ところがクローブよりも上にムスクが立ち、ローズとクローブが間に立つことで、ローズの硬さが引き立ち、クローブの湿った香りがさながら土のように感じられる。硬いローズムスクと、湿った土のように香りの組み合わせはとてもユニークだと思う。

そこから、セダーウッドやドライアンバーが香ることで、ローズにもアーシーな印象を与えていきながら、ドライダウンしていく。

 

鮮やかなローズの赤さを、ピンクペッパーの硬質な辛さや、アルデヒドの酸味でアレンジしたフレッシュなローズは2時間くらいは、アーシーなローズムスクは6時間近く持続する。

 

純粋に素材を楽しむというよりも、ローズやピンクペッパーという素材を使用することで、一つの作品として完成されているため、季節や性別を問わない香りだと感じる。

 

ベ ローズ26は、音楽、特にジャズミュージックを物語の中心としている。確かに、ベ ローズの弾けるようなピンクペッパーにコーティングされたフレッシュなローズは、とても陽気だ。この辛みの強いペッパーと、よりアップビートなジャズサウンドの一部には、直接的な相互関係があるとのこと。残念ながらジャズへの造詣がないため、なるほどね!と共感することができないが。

 

シカゴといえば、摩天楼、ジャスやブルースを育んだ音楽が誕生し、そして数々のアートが街を彩っているようなイメージがある。

 

そう考えてみると、このベ ローズ26は、アーティスティックなローズの香りだと思う。

辛みや苦みが伝わってくるスパイシー、グラース産ローズ アブソリュート、アルデヒドという素材を融合させ、真っ赤なエナメルでコーティングしたような、とても人工的でアートなローズの香り。

この美しいエナメルのような美しいローズの輝きと、包まれるだけで陽気になるようなポジティブな香り。その背後から、ジャズミュージックが聴こえてくるような。