MAISON FRANCIS KURKDJIAN
A LA ROSE EDP(2014年)
調香師:フランシス・クルジャン
おすすめ度:★★★★☆
画像出典:公式HP
天才調香師と称されるフランシス・クルジャンが、その天才性を発揮するのは、テーマがはっきりしている時が多い。
このアラローズのテーマは「日本人のためにつくったローズの香り」で、日本人の嗜好に寄り添うような、素晴らしいローズの香りだと思う。
具体的には、グラース産センティフォリアローズと、ブルガリア産ダマセナローズの2種類のローズを使用することで、華やかなローズと、フルーティな甘さのあるローズをそれぞれ堪能しながらも、全体的には繊細で控えめな香りでまとめられている。
アラローズはローズが好きな人はもちろん、苦手な人でも楽しめるのではと思えるような香り。
トップはシトラス。
キラキラしたオレンジや、みずみずしいベルガモットのシトラスミックスに、ライチやペアのフルーティをほんの少し添えた、フレッシュで明るいオープニング。そこにムスクをフワッと漂わせることで、優しくやわらかい印象に。
ミドルはフローラル・ムスキー。
トップの明るさやムスクのやわらかさを残したまま、華やかなローズが香り立ってくる。このブルガリア産ダマセナローズにバイオレットの青みを加えることで、ローズを輪郭をはっきりさせ、またナチュラルに演出している。
青みのあるローズが抜けていくと、今度はフルーティな甘さのあるローズが香ってくる。このグラース産のセンティフォリアローズにみずみずしいマグノリアを添えることで、ローズのまろやかな気品や、オレンジのような明るさも感じられ、かいでいると気持ちまで晴れていくようだ。
この2種類のローズを白いムスクで包むことで、ローズの赤さをピンク色に仕上げている。
ベースはウッディ・ムスキー。
フルーティなローズは蜂蜜のような甘さを増していき、それをセダーウッドやムスクがまとめていく。最後までこのフルーティなローズの甘さを残したままドライダウンしていく。
フレッシュなローズから始まり、少し青みがかったローズ、フルーティな甘いローズへと表情を変えたローズムスクの香りが4時間くらい持続する。
華やかさもありながらも可愛らしく、繊細で可憐なローズ。ハレのローズ香り。
ジメジメしない晴れた日の日中に、アラローズを身に纏うことで、その晴れ晴れした気持ちにフレッシュな華やかさを演出してくれるのではと思う。
公式HPを見るとアラローズには、グラース産センティフォリアローズが250本、ブルガリア産ダマセナローズが150本も使われているらしい。特にセンティフォリアローズ(メイローズと呼ばれる)は年に1回しか開花しないため、早朝に手摘みされた希少性とコストの高い素材を使用しているとのこと。
そんな贅沢なローズに、爽やかな明るさ、みずみずしさを加えることで嗜好を上げ、さらにムスクで包み込むことで、ローズの青みや赤みを抑え、ふわふわした天使のようなローズの表情を創り上げている。
特にミドルからベースにかけての、透明感のあるフルーティなローズが特に素晴らしく、ローズでこういうフルーティ感を出されてしまうと、いわゆるフルーティフローラル系の香りには、もう戻れないのではと感じる。
フランシス・クルジャンによる、日本人のためのローズの香りは、日本でも人気のシトラスやフルーティやムスクで整え、さらにフルーティ部分はグラースのメイローズで表現した、最高の贈り物。