MILLER HARRIS
LOST IN THE CITY(2018年)
調香師:マチュー・ナルダン
おすすめ度:★★★☆☆
画像出典:公式HP
ミラーハリスのロスト イン ザ シティはフォーリッジコレクションからの作品で、Beauty in Ordinary(どこにでもあるけれども、気づかない美しさ)を伝えたいというメッセージが籠められている。
このロスト イン ザ シティは、ロンドンのコンクリートの割れ目の片隅で、確かに息づく草花。47%もグリーンが占めるロンドンの自然と、都会的な街並みのコントラストを描いた作品とされる。
トップはシトラス・グリーン。
スプレーすると、果皮感のはっきりしたベルガモットと、硬質なアンジェリカのグリーンを、冷たさのあるカシスがみずみずしくも凛とした印象を与えている。
ミドルはフルーティ・アロマティック。
ベルガモットの引き締まった酸味の後ろから、ルバーブのみずみずしい苦みのある甘酸っぱさが前に出てくる。このあたりの香りは、エルメスのオードゥ ルバーブ エカルラットと重なる。さらに、奥から少し油っぽいアロマティックなゼラニウム、イメージカラーに近いピンク色のピオニーローズが香ることで、みずみずしさや甘さや酸味のバランス感は秀逸、でもナチュラルだけどどこか人工的で、何となく落ち着かない雰囲気も感じる。
ベースはフルーティ・ムスク。
アロマティックなルバーブに、スモーキーなアールグレイのナチュラルな甘さや、ドライアンバーの辛さや硬さを加えることで、ミドルの印象が維持されている。そして、淡いムスクの香りを添えながらドライダウンしていく。
最初の1時間はフレッシュやグリーン、甘酸っぱさが尖っているものの、それらのトーンが丸みを帯びていくように、4時間くらい持続する。
緊張感のあるシトラスグリーンや、みずみずしいフルーティを効かせた、春から夏にかけて似合う香り。
ベルガモットの果皮感や、ルバーブの甘酸っぱい甘さは食べ物のようで、とてもナチュラル。一方で、引き締まったカシスと、アロマティックなゼラニウムの少し油っぽい重さがの組み合わせが、どこかコンクリートのような印象を与え、人工的にも感じられる。
都会の外れに生息する植物と人工の造作物との共存をテーマに創られたというコンセプトが伝わってくるような個性的な香りで、好き嫌いがはっきり分かれるのではと思う。