TOM FORD
GRAY VETIVER EAU DE PARFUM(2009年)
調香師:ハリー・フレモント
おすすめ度:★★★☆☆
画像出典:公式HP
トムフォードのグレイベチバー。これほどビジネスシーンに似合うベチバーの香りはそうそうないのではと感じている。
プライベートブランドに多くみられる、あのラグジュエリー感を全面に出した重厚な香りとは異なる、ビジネスシーンにビシッと決まる汎用性の高い香り。
終始ウッディでありながらも、ラグジュアリー感や、男っぽい色気を抑えた、クールでスタイリッシュな香りで、手元に置いておいて損はしないフレグランスだと思う。男性のビジネスシーンで使うのであれば、このグレイベチバーとボーデジュールはおすすめしたい香り。
トップはシトラス・アロマティック。
スプレーすると、フレッシュなグレープフルーツがパッと香り立ち、その奥からベチバーの軽い部分がフワッと包み込むような、男らしいシトラスアロマティックの香り。
ミドルはアロマティック・ウッディ。
男性的なアロマティックなシトラスを残しながら、ベチバーのウッディ感が強くなっていく。そしてセージがそのアロマティック感を補強しているような香り。ナツメグやピメントが男らしいキレや、オレンジフラワーの明るさが、アロマティックなウッディの色彩を鮮やかにしているような香り。
1時間くらい経つと、オレンジフラワーやピメントが香るその奥で、次第に存在感を増したアイリスの土のような硬さとベチバーと重なることで、ややもすると粘土の匂い?と感じてしまうくらい、一気にグレイ色のベチバーの香りになる。ここまでが2~3時間くらい。
ベースはウッディ・アーシー。
パウダリーな深みのあるアイリスとドライなセダーウッドに、オークモスがアロマティックともアーシーとも取れるアクセントを与える。そして少しずつアンバーのやわらかさを感じながらドライダウンしていく。
グレープフルーツとアロマティックなベチバーの組み合わせが1時間くらいで、アイリスを加えたグレイベチバーの香りは4~5時間持続する。
あまり季節を問わない香り。とはいえ、時間が経つにつれてモノトーンなウッディの香りになるため、秋(10~11月)に良く使う香りだと思う。晩夏の夜にも使いたくなる。冬だともう少しウッディの厚みが欲しくなり、春だともう少し色合いが欲しくなる。
灰色のベチバーという名前なので、香りの流れを色で例えるならば、、、
まず、明るい黄色から始まり、少しずつベチバーのブラウンのイメージが加わることでオレンジ色の香りに変わり、そこから一気に暗くなってグレイに、最後はダークグレイへと移り変わるようなイメージ。
キリッとしたシトラス、男らしいアロマティック、颯爽としたウッディの三位一体が揃った、とにかくバランス感覚の長けた香り。特に30代には似合う香りだと思うし、昔は良く手を伸ばした。
ところが歳を重ねていくと、もう少し深みが欲しくなったため、スーツスタイルをよりクールに演出したい時は、同じトムフォードであれば、ウードウッドを選ぶようになった。さらに春夏であっても、ウードウッドにネロリポルトフィーノあたりを重ね合わせると、爽やかさと深みが調和するため、卒業までは至っていないものの、グレイベチバーを使う機会は減っていく一方だ。