CREED
AVENTUS COLOGNE(2018年)
調香師:オリビエ・クリード
おすすめ度:★★★☆☆
画像出典:公式HP
1760年にロンドンで創業した、老舗のフレグランスブランドのクリード。
なかでも250周年を記念した発売されたアバントゥスは、メンズフレグランスの名香として名高く、個人的にもっとも好きな1本だ。
しかし、残念ながら2019年5月に日本から撤退した。撤退してしまうと、店頭での新作チェックや、香りを試すことができなく確認できなくなる。何よりも大きいのは、クリードに対して、情報収集を行わなくなることで、アバントゥスからコロンタイプが出ていたことをしったのは、発売から2年経過した2020年のこと。
あのメンズフレグランスの傑作アバントゥス(2011年)から、2018年にコロンが発売されていたことを知ったのは2020年のこと。あのアバントゥスのコロンはどんな香りだろう?という興味に抗うことができず、滅多にしないブラインド買いをした香り。
トップはシトラス・スパイシー。
スプレーするとほんの一瞬、アバントゥスのパイナップルのような甘さが香る。でも、それはほんの一瞬で、すぐにみずみずしいマンダリンと、キリッとしたジンジャーの香りに包まれる。このジンジャーの香り方は、同じクリードのベチバーを思い出させる。
ミドルはアロマティック・ウッディ。
爽快なジンジャーを残しながら、メンズフレグランスの定番ともいえる、少しマリン寄りのアロマティックウッディが香ってくる。奥からは、アバントゥスらしいバーチのスモーキーで乾いたウッディも感じられる。
ベースはウッディ・ムスキー。
バーチの乾いたウッディ感や暗いサンダルウッドを、ムスクが柔らかく仕上げているような香り。さらにスチラックスの焦がしたようなレザー調が、メンズらしい奥行を与えている。そして、どこかシャネルのアリュールオムスポーツに似た香りを漂わせながら、ドライダウンしていく。
コロンという名のオードゥパルファムで、爽快なアロマティックシトラスは2時間弱、アロマティックをしっかり残しながらウッディムスクの香りは約5時間持続する。
すっきりしたシトラスやスパイシーを効かせた香りで、夏を中心に春や秋に似合う香りだと思う。
ムエットで香りを確認すると、ド定番のアロマティックウッディを、シトラスやジンジャーで味付けした程度のとてもキャラクターの薄い香り。あの香りに似ている?というフレグランスがいくつも思い浮かぶような。正直、あのアバントゥスのような独特なキャラクターや気品は感じられない。
ところが肌に乗せると、特にミドル以降、アバントゥスの雰囲気が顕著に出てくる。
アバントゥスのフルーティ感、シプレ感、オークモスのキレなど、アバントゥスらしい香りがフワッと香ってくる。もしかすると、10%くらいはアバントゥスの香料そのものを混ぜているのかもしれないと感じられるほど。
肌に乗せることで、タールのようなウッディの残香が少し鼻に付く。もう少し、アバントゥスのようなキレのあるオークモスを効かせたシプレウッディや、柔らかいムスクが出てくれれば、さらに良かったのではと思う。
アバントゥスは一度触れると忘れることができないような色気と、男らしい重厚なウッディと、柔らかいシプレの気品があった。逆に、日常使うにはかなり格好良すぎるため、年に数回程度しか使わなかったのが現実。
アバントゥスコロンは無難なメンズ定番フレグランスに、アバントゥスの雰囲気を添えたような香りなので、圧倒的に使いやすく、使用頻度は断然コロンが高い。
アバントゥスの香りが好きなのであれば、一度試す価値があると思いつつ、日本未発売。
欲しい情報はすぐ手に入り、ボタン一つで自宅まで届けてもらえる、便利な時代になった。でも、ふらっと店頭に足を運び、何気なくかいだフレグランスに感動するケーズも少なくはない。やはり、現物に勝るものはない。特にフレグランスの場合、ボトルを眺めたり、ムエットで香りを確認したり、販売員さんの説明を聞きながら、実際に肌に乗せて初めて、そのフレグランスの全体像が分かってくる。
しつこいけれど、クリードの日本撤退を残念に思う。