CHANEL
UNE FLEUR DE CHANEL(1998年) ※廃番
調香師:ジャック・ポルジュ
おすすめ度:★★★★☆
ユーヌフルールドゥシャネルはかつて幻のフレグランスと呼ばれていた。さすがに今では完全に忘れ去らされた作品になっているのかもしれない。
1998年、ココシャネルの想像上の庭園をテーマにした「ザ・チェルシーフラワーショー」の開催を記念して発売されたが、僅か一月のうちに完売してしまった。人気があったためか、2004年12月からニューヨークのシャネルブティックで限定再発売されたものの、現在では廃番になっている。
シャネルの花というの名にふさわしい、濃密なホワイトフローラルと、爽やかなグリーンやスパイシーを合わせた、フレッシュフローラルブーケの香り。
トップはフローラル・グリーン。
フルーティ要素の強いガーデニアと、グリーンアップの香り。グリーンアップルのみずみずしさが強く、フローラルな甘さを抑えたガーデニアがとてもフレッシュで嗜好が良い。奥からうっすらとスパイスを効かせたチュベローズが漂ってくる。
ミドルはフローラル・スパイシー。
グリーンが落ち着いてくると、フルーティのみずみずしさを残したガーデニアの甘さに、クローブやピメントを思わせるスパイシー感を合わせたチュベローズのツンとしたフローラル感が寄り添う。トップとは違う、フレッシュなガーデニアの香り。
さらに、クラリーセージのアロマティック感を添えた、爽やかなジャスミンがふんわりと香り、このジャスミンの香りがとても素晴らしい。
ベースはウッディ・ムスキー。
インドールを抑えたジャスミンの残香に、ベチバー、甘いアンバー、ムスクを合わせた香り。ミドルの比重が高く、ベースは淡めで、ジャスミンの余韻を残したままドライダウンしていく。
変化幅の少ない、終始ホワイトフローラルが楽しめるような、シングルノートに近い香り立ち。みずみずしく若々しいフルーティフローラルから、フレッシュなフローラルの甘さを漂わせながら、全体では3~4時間持続する。
フレッシュなグリーンやスパイシーの風に、フローラルブーケの甘さが乗っているような香りで、特に春に似合う香りだと思う。
香りの構成は、ガーデニア(1925年)に似ている。ガーデニアの、オレンジやチュベローズ、カーネーション、ジャスミンサンバックなどの濃厚なフローラルノートと、スパイシーやグリーンと合わせたフレッシュフローラルな香りに対して、このユーヌフルールドゥシャネルはさらに透明感を増した若々しい香りに仕上げてられている。特にミドルからベースにかけての、透明感のあるホワイトフローラルブーケの香りをかぐと、ポジティブな気持ちになる。
草原に咲くジャスミン。春風に乗って、白い花や緑の葉が舞っているようなイメージ。官能的なジャスミンとは別の溌溂としたジャスミンの表情を楽しめる香り。
このユーヌフルールドゥシャネルにもっとも近く、上位モデルの香りがクリードのホワイトフラワーズだと感じている。
最近、弾けるようなみずみずしいフローラルの香りがが少なくなったと思いながら、今日もユーヌフルールドゥシャネルをスプレーしてみる。