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ゲラン:ドゥーブル ヴァニーユ

GUERLAIN

SPIRITUEUSE DOUBLE VANILLE(2007年)

調香師:ジャン=ポール・ゲラン

おすすめ度:★★★★★


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画像:公式HPより

 

最高のバニラ素材を持つゲラン。ホームページを見ると次のように説明されている。

マダガスカル産のバニラ・プラニフォリアは、ドゥーブル ヴァニーユにウッディなファセットの芳香をもたらしています。この特別な品種は、準備に18ヶ月を要します。通常は風味付けのために使用されますが、ゲランで継承されている熟練の技術により、バニラを手作業でカットし、アルコールの中で寒冷浸透させ、完璧な香りにまで高めます。

そんなゲランが創り出した最高峰のバニラの香り「ドゥーブルヴァニーユ」は、究極のバニラと言っても言い過ぎではない。


芳醇なバニラの甘さに酔いしれつつも、フレッシュ、アロマティック、華やか、大人らしいビターな味わいなど、様々な表情が現れる。飽きることのないまさに究極のバニラの香り。

 

トップはスパイシー・アロマティック。

スプレーすると、フルーティなベルガモットと、ピリッとしたピンクペッパーが弾け、背後からはアロマティックなバニラが甘さを添えることで、洋酒を思わせるフレッシュなオープニング。

 

ミドルはウッディ・フローラル。

上層部はピンクペッパーを効かせたフレッシュなバニラが、みずみずしく艶やかなイランイラン、そして華やかなローズに、それぞれ深みのある甘さを与えていく。ほどよくアロマティックで、官能的なフローラルの甘さにうっとりする。

その奥には、ドライなセダーウッドや、スモーキーなインセンスと合わさった大人っぽいビターなバニラが漂っている。

 

ベースはバニラ・アンバー。

軽やかなフローラルバニラと、セダーウッドやベンゾインやビターな甘さが合わさることで、まさにラムのような芳醇な甘い香りとしてまとまっていく。

やがてベンゾインが減退してくると、濃厚なバニラとドライアンバーの香ばしい甘さのままドライダウンしていく。

 

トップからミドル中盤までの軽やかなバニラが2時間くらい、そこから甘さや深みが加わりながら、8時間以上持続する。

 

最初から最後まで、ドゥーブルヴァニーユの骨格となっているバニラは、通常のバニラの香りはまったく異なっている。

特にトップからミドルにかけては、軽やかでフレッシュ、アロマティックで透明感のある、とても芳醇なバニラの香りだ。スパイシーやフローラルがこのバニラ素材の特徴をうまく引き出していると思う。なかでも、スパイシーなバニラからフローラルなバニラへ移ろう瞬間、その意外性あふれるバニラの香りに浸り、そして陶酔する。前半部分のバニラの表現が特に好みだ。

そしてミドル中盤からはなじみ深いバニラの白い甘さ。でも、重厚で深みのあるウッディバニラ、さらにはアンバーバニラへと変わる一歩手前のラム酒のようなアクセントがとても巧みだ。素材の素晴らしさだけでなく、調香の技にも感動する。

フレッシュバニラとビターバニラの二重奏。まさにダブルバニラの名にふさわしい香りで、ジャン=ポール・ゲランの最晩年の傑作だと思う。

 

ラールエラマティエールのなかで、このドゥーブルヴァニーユは唯一重ね付けが推奨されている香り。

私の場合、お気に入りのローズバルバルと重ねることで、アロマティックかつビターな甘さを加え、もうワンランク上の香りに仕上げる使い方が多い。

 

乾燥の厳しい冬、究極のバニラの香ばしい甘さを堪能し、なおかつ、世界に一つしかないバニラの香りを探してみるのはどうだろうか。