GUERLAIN
CUIR BELUGA(2005年)
調香師:オリビエ・ポルジュ
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HPより
ラールエラマティエールはゲランが誇る最高傑作の真髄を集めたコレクション。調香師たちの手によって芸術に昇華された、美を愛する人へ贈る香りとして2005年に発表された。
最初に発表された作品は、アンジェリークノワール、ローズバルバル、そしてキュイールベルーガ。
キュイールベルーガは、レザーを柔らかく滑らかに解釈することで、ホワイトスエードの中毒的な甘さを表現した香りとしている
トップはシトラス・フローラル。
スプレーすると、みずみずしいタンジェリンに、イモーテルのフローラル甘さがすっと寄り添っている。まさに黄色というイメージがピタッとはまるフローラル感を、アルデヒドでクラシカルに仕立てたような香り。
ミドルはフローラル・バニラ。
そんな軽やかなイモーテルの背後から、バニラの軽い部分がフワッと立つことで、バニラの甘さがまるでイモーテルの花の蜜のように感じ取れる。フレッシュなフローラルバニラの香り。
そこから徐々にパチョリが加わることで、バニラの甘さが増していき、さらにレザーの焦げた雰囲気も漂ってくる。
ベースはレザリー・パウダリー。
フレッシュなフローラルバニラに、ヘリオトロープが加わることで、一気に白っぽく、パウダリーな女性らしい印象に変わっていく。
上の方はこの白イメージのフローラルバニラ、奥からはレザーとアンバーの重厚な香りの二層構造。時間と共にその2つが重なり合うことで、まるで輝くようなスエードの香りとしてまとまっていく。とても美しいスエードの表現。
最後はバニラやヘリオトロープが前に出ることで、パウダリーな白いレザーのような香りでドライダウンしていく。
軽やかなフローラルバニラが2時間、そこから徐々にレザー感と交錯することで、真っ白い甘さをまとったスエードの香りは6時間くらい持続する。
秋から冬にかけて似合う香り。特に晴れた日の日中にこのフローラルと融合した目映いばかりのスエードはとても似合うし、そこからパウダリーな甘さにつつまれたスエードの香りとともに、夕方、夜を過ごすのも良いのではと感じる。レザーの深みや温もりの対極のあるような、女性のためのレザーの香り。
キュイールベルーガは、軽やかなスエードのようにしなやかで、無限に光り輝くレザーの香りは、ベルーガキャビアのように洗練され、純粋なラグジュアリーを低減した香り。
まるで本物のようなスエードの香りは数多い。しかし、キュイールベルーガのように、軽やかなフローラルバニラと、重厚なウッディを重ねることで、きらびやかに輝くホワイトスエードを見事に創り出した香りは他に知らない。
本物のスエードではなく、フレグランスだからこそ到達できた世界だと思う。