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フレデリック・マル:ユヌ ローズ

FREDERIC MALLE

UNE ROSE(2003年)

調香師:エドゥアール・フレシェ

おすすめ度:★★★★★

 

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画像:公式HPより

 

究極のローズの香りといえば、真っ先にナエマを思い浮かべる。

ナエマは、ゲランのもっとも素晴らしいローズと称された名香にとどまらず、香水史上最高のローズの香りで、ナエマを知ってしまったがゆえに、他のローズの香りが霞んでしまう。

そして、男性視点での最高のローズの香りと言えば、ローズバルバルを挙げたい。

ローズバルバルは、男性でも自然にまとえるようなローズシプレの傑作で、この香りとの出逢いによって、もうローズ探しの旅を終わりにしようと決めたくらいに素晴らしい香り。

 

ところが、このユヌローズをかいでしまうと、これも最高のローズではと悩み、ローズ探しの旅を終わりにしたのは時期尚早だったのではと決意がぐらつく。

ユヌローズは、薔薇の豪奢さにトリュフで陰影を与えることで、優美さを極めたパルファムで、軽々しくローズが好き!などと言えなくなるような、哲学者のローズの表現。

 

トップはローズ・フルーティ。
スプレーすると、いきなり花開く、真っ赤なローズに驚かされる。とてもアロマティックでスパイシーなローズの香り。じっくりかいでみるとベリーのような酸味、そしてゼラニウムの辛さとアロマティック感が重なることで、赤ワインに包まれたような芳醇なローズの風味に酔いしれる。
 
ミドルはローズ・アロマティック。
赤ワインのように鮮やかなフルーティな酸味を残しながら、ローズの華やかなフローラル感、そしてゼラニウムの硬いアロマティック感が強くなってくる。真っ赤で、棘があり、なおかつ優美。そんな複雑なローズの表情を見せながら、それらが一つにまとまることで、どこか強靭な意志を感じさせるローズの香りに。
奥からはパチョリが姿がはっきりと感じ取れる。このパチョリの湿ったアーシー感には、うっすらとカストリウムのアニマリックなコクも備わっていて、確かにトリュフの風味がしっかり伝わる。
 
ベースはローズ・ウッディ。
ゼラニウムのみずみずしさが少しずつ乾いていくと、ゼラニウムの辛みを立たせながら、ローズの濃厚な甘さ、そして深みを増していく。この甘さはハニー、深みはトリュフのようなパチョリが支えた、陰影のはっきりした深紅のローズは、立ち振る舞いが美しい。
やがてローズとトリュフの香りから、ローズがトリュフに侵食していくことで、暗闇の中で真っ赤に輝く、気品と深みが備わったローズの香りへと変化していく。
最後はトリュフの一角を構成していたカストリウムが減退することで、パチョリやベチバーが、硬くアーシーなローズシプレを創り出し、その香りが延々と12時間以上続いていく。
 
ユヌローズは香水(パルファム)であり、フレデリック・マルの作品のなかで、もっとも賦香率が高いとのこのこと。マル自身も、ユヌローズは1プッシュのみの使用を推奨している。
 
そのため、ユヌローズは季節と調和することを拒み、どんなシチュエーションでも真っ赤な薔薇を咲かせてくれる。
それでも、ヌユローズが似合うのは冬、それも晴れた日ではなく、暗く曇った日か雨の日だと思う。というのもヌユローズは、真っ赤な薔薇と、薔薇の花弁1枚1枚の凹凸や花の水気、青々とした茎や鋭い刺、さらには土の匂いや湿り気まで、薔薇と薔薇周辺の機敏全てを捕まえた香り。着飾ったローズの花束ではなく、野に咲く薔薇の強さと美しさ。太陽の陽射しに囲まれてしまうと、この薔薇の陰影は輝かない。
 

ユヌローズとは「一輪の薔薇」の意で、みずみずしくフレッシュなローズから、アロマティックな硬いローズ、そしてトリュフと融合した気品のあるローズ。トレンドに烏合しない、ローズに始まりローズに終わる香り。そして一輪の薔薇のこそ、至高の薔薇だとマルは語っている。