CHANEL
GABRIELLE(2017年)
調香師:オリビエ・ポルジュ
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HPより
ガブリエルはチャンス以来、シャネル14年ぶりの新ラインとして、2017年に発表された。
当時、久しぶりの新作であり、名前が「ガブリエル」だったため、期待に胸を膨らさせたこと。そして実際にかいでみて、とても嗜好が嗜好が良い、キレイなフローラルの香りに納まっていて、拍子抜けしたことを憶えている。
4代目オリビエ・ポルジュ作品の第一印象は、おとなしく、シャネルらしいキャラクターが薄いと感じるものの、使い込んでいくと素材の確かさと作り込まれた感があり、時間の経過とともに好きになっていく香りが多い(N°5ロー、ボーイなど)。
ガブリエルも、イランイラン、ジャスミン、オレンジフラワー、そしてチュベローズの4つの白い花々が織り成す、軽やかに光り輝くフローラルの香りで、若々しくも洗練された清潔な香りに仕上げられている。
トップはシトラス。
ガラスの厚みを抑えた繊細なスクエアボトルをスプレーすると、果皮感の強いグレープフルーツと明るいマンダリンオレンジの、シトラスリッチなオープニング。
ミドルはフローラル。
トップのシトラスで切り拓いた明るさや果皮感に、フローラルが乗っていくようなイメージ。
明るさにエスコートされたイランイランは、今までのシャネルらしさを否定するような爽やかさが感じられる。
そして果皮感は、みずみずしいカシスを伴ったオレンジフラワーやジャスミンが、若々しいフローラルが花を開かせている。
やがて、ジャスミン影に隠れていたチュベローズにバニラの甘さを添えることで、徐々に女性らしい雰囲気が強くなっていく。
ベースはウッディ・ムスキー。
ようやくチュベローズのエキゾチックが顔を出すものの、すぐにサンダルウッドやムスクと調和してしまうため、少し乾いたチュベロースのようにも映ってしまう。そのチュベローズが収まってくると、ほのかにソープ調のウッディ・ムスキーの香りでドライダウンしていく。
持続時間は4時間程度で、特に前半2時間の明るいフローラルは、爽やかさや若々しさに溢れていて、未来、夢、可能性などポジティブなオーラが備わっているようにも感じられる。
フローラルやシトラスの明るいシャワーのような香りで、春を中心に、夏や秋の晴れた日の日中に似合う香り。太陽の光を、輝きに溢れるフローラルで着飾ってくれるように。
ガブリエルでは、シャネルでは初めて、自家栽培(30年来パートナーシップを結んでいるグラースのミュル家が栽培)したチュベローズが使用されている。そのチュベローズを明確に立たせることなく、他の3つの花のアクセントとして添えることで、良く言えばバランスの取れた美しいフローラルブーケの香り、悪く言えば嗜好重視でキャラクターの薄い香りになっている。
周知のとおり、ガブリエルとはココ・シャネルの本名で、ココではなく、あえてガブリエルという一人の女性からインスピレーションを得て誕生したフレグランスとしている。
ガブリエルは、ココ・シャネルやマドモアゼル・シャネルと呼ばれる以前の、輝く未来や可能性を思い描いていた頃の香り。ボトルの繊細さ、表面の波打つような柔軟性、そしてゴールドに輝く液面も、香りに寄り添うように輝いている。
そこには、後年のココ・シャネルの美への飽くなき追求、バイタリティや潔癖さ、凄まじいまでの嫌悪の精神は、まだ見つけられない。