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キリアン:ウォッカ オン ザ ロックス

KILIAN

VODKA ON THE ROCKS(2014年)

調香師:シドニー・ランセスール

おすすめ:★★☆☆☆

 

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画像:公式HPより

 

ウォッカ オン ザ ロックスは元々、ロシアのモスクワ店限定の香り。それがアディクティブ ステイト オブ マインド(嗅覚への依存、日常からのエスケープ)コレクションとなり、現在はザ フレッシュに分類されている。
 
ヘネシー家で生を受けたキリアンらしいコンセプトと、とてもクールなネーミング。氷で冷やされたウォッカの誘惑とはどのような香りなのか。

 

トップはスパイシー・マリン。

スプレーすると、コリアンダーの鋭いスパイシー感や、カルダモンのみずみずしい冷涼感、さらにはこのフレグランスの骨格でもある、かなりマリン寄りのメ ンズアロマティックの香り。そこにアルデヒドを加えることで鋭さや暗さを、マイルドに明るく整えたようなオープニング。

 

ミドルはアロマティック・スパイシー。

鼻先はみずみずしいしく冷たいスパイシーが漂っている。これをアルデヒドがフワッと丸めることで、なるほど氷っぽくも感じ取れる。

メインの香りはマリンの硬さが落ち着いてきたアロマティックノートで、ルバーブの甘さや軽いフローラルが、アロマティックのメンズっぽい香りの角を丸めて、上品な雰囲気にまとめている。特に時折鼻を突くグリーンミュゲはとても清潔で心地よい。

奥からは力強いアンバーがしっかり感じられる。

 

ベースはフゼア・アンバー。

メロンのようなみずみずしいフローラルを漂わせたアロマティックに、オークモスが加わえたソフトなフゼアノートと、ドライアンバーの香り。

少しずつアンバー部分がなめらかに移ろっていき、最後はサンダルウッドの香ばしさを感じながらドライダウンしていく。

 

春夏に似合いそうな冷たいアロマティックフゼアを、清潔なフローラルでまとめているため、季節を問わずに似合う香りだと思う。

 

最初の30分はアイスを思わせる冷涼感、そこからウォータリーなアロマティックアンバーが4〜5時間くらい持続する。

 

その名のとおり、氷で冷やされたウォッカをイメージした香り。クールなスパイシーをアルデヒドで氷のように仕立て、アロマティックを水っぽいフローラルで着飾ることでウォッカを表現している。このキリッとしたウォータリー感のためか、店頭ではグッドガール ゴーンバッドなどのレディース寄りの香りと重ね付けすることで、男らしくクールに演出するような提案を受ける。そういう意味では使いやすい香りかもしれない。

 

そして、逆にそれが仇となっているようにも思えてくる。端的にいうと、個性に欠ける。

メンズのド定番のアロマティックフゼアを、例えばブルードゥシャネル以上に、キリアンらしい個性を前面に出せば良かったのにと思う。

アロマティックフゼアはかなり輪郭がはっきりしているため、氷のような冷涼感の小技を効かせたところで大枠は変わらず、逆にマイルドに清潔に装飾したため、いわゆるファッションフレグランスの域を出ない、こじゃれたモテ香水になってしまっている。キリアンらしい個性が物足りないと感じてしまう。

 

氷のような冷涼感といえば、同じキリアンのローゼス オン アイスが思い浮かぶが、好き嫌いは別にして、ローゼスの方がキリアンらしい個性が備わっていると思う。