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フレデリック・マル:カーナル フラワー

FRDERIC MALLE

CARNAL FLOWER(2005年)

調香師:ドミニク・ロピオン

おすすめ度:★★★★★

 

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画像:公式HP

カーナルフラワーは、ポートレイト オブ ア レディームスクラバジュールと並ぶフレデリック・マルの代表作で、マルとドミニク・ロピオンが「チューベローズの花に驚くほど忠実なフレグランスを創香する」ことをテーマにした作品。ポイントはチュベローズの「精油(アブソリュート)」ではなく、あくまで「花」にこだわった点で、それはフレグランス用にデフォルメされていないチュベローズの香り。

 

とはいえ、実際のチュベローズの花の香りを嗅いだことがない。それでもマルが「ロピオンは花の蒸発について世界一の鑑定家であり、百科事典のような存在」 だと認めており、そのロピオンが2年以上かけて処方の開発に取り組んだとされるカーナルフラワーは、チュベローズの花を忠実に再現したフレグランスなのでは思っている。

カーナルフラワーは「肉欲的な花」という意味で、チュベローズの美しくも官能的なキャラクターを余すことなく表現した香りに仕上がっている。

 

トップはハーバル。

スプレーするとユーカリの強いカンファー臭と、アブソリュート特有のアーシーな匂いが鼻を刺激する。カンファー臭はすぐに飛んでしまうが、湿布にも似た匂いがさらに増していくようなオープニング。

 

ミドルはホワイトフローラル。

そんな強いユーカリ臭に覆われながら、このフレグランスの主役チュベローズの香りがはっきりしてくる。徐々にアブソリュートの色合いが濃くなり、フルーティ、スパイシー、アーシーなどの雑味までもがしっかりと感じられるチュベローズの香り。マル自身が「カーナルフラワーは、最も高濃度の天然チュベローズを使用している」と謳っていることが納得できる。

そういう雑味を含みながら、オレンジフラワーのスパイシーな深みや、イランイランのみずみずしい輝き、さらにはジャスミンのアニマリックな甘さを加えることで、アブソリュートからチュベローズの花の香りが開いていくようなイメージの、とても複雑で分厚いホワイトフローラルの香りが広がっていく。

 

ベースはフローラル・ムスキー。

徐々にジャスミンやオレンジフラワーにメロンのみずみずしさ加えることで、ナチュラルな香りに丸みを帯びてくる。

さらに、ココナッツの白くミルキーな甘さを含ませることで、フローラルが乾いていかず、どこかしっとりしている。そして肌に乗せると、このココナッツ甘さが肌と調和するため、さながらチュベローズの甘さが肌に寄り添ってくれるようで、とても艶っぽい。ほんのりユーカリも感じられ、柔らかいけれど硬い、甘いけれど冷たい、月下香という呼ばれ方に相応しいチュベローズの香り。そんな夜を思わせるチュベローズを、ムスクの柔らかさを加えながら、最後まで続いていく。

 

最初の30分くらいはユーカリの湿布臭やアブソリュートの雑味が強く、あまり嗜好が良くない。でもチュベローズの花が開き始めると、美しく官能的なチュベローズの香りが6時間以上持続する。

 

チュベローズを中心とした、あまり季節を問わない香り。それでも、ユーカリの硬さやフルーティなみずみずしさがアクセントとして置かれているため、春から夏にかけてもっとも似合う香りではと思う。

 

チュベローズのフレグランスは、どこかエキゾチックで官能的な香りが多い。チュベローズの花をできるかぎり再現したカーナルフラワーにもそういう側面がある。特にミドルのフローラルが折り重なった香りはとても官能的だ。ところが実際に肌に付けてみると、ユーカリのハーバルグリーンや、アブソリュートの雑味がとてもナチュラルで、官能に溺れていかない。

 

公式ホームページを見ると、カーナルフラワーについてエロティックな花と述べられている。

確かにチュベローズから漂うダークでスパイシーな香りや、ミルキーなコクはとてもエロティックで、フェロモンのような磁力が備わっている。いわゆるフローラルな華やかさや可愛らしさや女性らしさとは異質の、美しくも危険な雰囲気を帯びている。

でもカーナルフラワーはハーバルグリーンのニュアンスが自然で、どこか癒される。フルーティのみずみずしい甘さも心地よい。

結果として、濃厚なチュベローズが7割、爽やかなグリーンが3割、そして少しだけムスクでフレグランスとして整えたような、唯一無二のチュベローズの香り。