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愛しのムスクの香り7選

思い切って、愛してやまないムスクの香りを7本選んでみることにした。

正直、ムスクの香りを選ぶことはとても難しい。

なぜなら、ムスクが使用されていないフレグラスなどほとんどないから。

 

 

 

ムスクについて

ではムスクとはどんな香りなのだろうか。

ムスクは麝香と呼ばれ、かつては雄の麝香鹿から、その下腹部にある香嚢を切り取り、乾燥させて採取していた。

フレグランスにムスクをごく少量加えることで、魅惑的な深みや広がり、さらに持続性を与えたとされる。ムスクがあまりにも魅惑的な香りのため、麝香鹿は乱獲され、絶滅の危機に瀕した結果、現在ではワシントン条約によって商用目的取引は制限され、天然のムスクの香りはほぼ流通されていないとのこと。

 

ムスクについての詳しい記事はこちらを↓↓↓

lechercheurdeparfum.com

 

世に流通しているほぼすべてのムスク=合成ムスクのことで、この合成ムスクは化学メーカーや香料会社によって、多くの種類が開発されている(ニトロムスク、多環状ムスク、大環状ムスク、鎖状ムスクなどの詳細については専門家に任せる)。

 

そんな多彩なムスクを使用することで、香りに深みや広がりが生まれ、甘みや柔らかさ、清潔感や高級感、さらには官能性が備わってくる。そのため、ムスク単体の香りよりも、ムスクを散りばめた香りの方が圧倒的に多い。

 

今回はムスク単体の香りだけでなく、ムスクが主役の個性的な香りなど、自分好みでセレクトしてみた。

 

ムスク25(ムスク×アルデヒド)

ロサンゼルスのシティエクスクルーシブのムスク25は、その名のとおり、ムスクに焦点を当てた香りで、ムスクの本質と偶像を掛け合わせた、ルラボらしいひねくれた作品だと思う。

軽い部分のムスクは、清潔感をそのまま香りにしたようなソープ調ムスク。重い部分のムスクは、かなりアニマリックな温もりの強いムスク。この二つのムスクを融合させた香り。

肌に乗せてみると、固形石けんのようなアルデヒドフローラルが拡散していく。多くの人がムスクと感じてしまう清潔な香りに包まれながら、肌周りは麝香というべき、アニマリックなムスクのコクと温かみが覆っている。

フローラルアルデヒドに包まれることで、魅惑的なムスクの温かみがより際立った、かなり中毒性の高い香り。

 

ュール エ ムスク エクストリーム(ムスク×フルーティ)

ラルチザンの代表作、ミュール エ ムスク。もはや古典のような風格すら感じるムスクの香り。そのエクストリームタイプに、長年片想いしている。

このエクストリームは、キリッとした、でもどこか可愛らしい、クールとキュートが融合した独特なムスクの香り。ただ、肌に乗せると狙ったとおりに香ってくれない。

冬場に使うと、クラシカルなシトラスが立ちすぎてしまい、男っぽくなる。夏場に使うとベリーとベタ甘さが籠ってしまい、暑苦しい。

それでも、少し気温が高めの、空気がからっとした春や秋の日中、シトラスグリーンで引き締まった、クールなベリーに包まれたムスクがふわふわと香る時がある。

上手く香った時のあの快感が忘れられなくて、天気を観察しながら、今日使ってみようかと逡巡する、、、そんな香り。

 

グッドガールゴーンバッド(ムスク×フローラル)

こちらもキリアンの代表作グッドガール ゴーンバッド(以下GGGB)。キリアンのなかでもっともムスキーな香りは、ローリング イン ラブだと思う。

でもGGGBは使い込むことで、好き度が増し、香りの印象を変わっていくような、底の深い香り。

可愛らしいフルーティの明るさと、官能的なフローラルアンバーのコクや暗さ。最初は、その対比がとても対照的な香りだと思っていた。

ところが、最近ではこのGGGBは、フローラルフルーティをムスクという渦で包んでいるような香りではと感じている。

前半の可愛らしいフルーティから、官能的、退廃的なフローラルに沈んでいくのとリンクさせるように、ムスクも軽く清潔なムスクから、重く動物的なムスクにスパイラル状に沈んでいく。点にフォーカスしてみると、アプリコットやオスマンサス、チュベローズが目立っている。でも、香り全体を俯瞰してみると、GGGBは終始ムスクの物語ではないかと感じるようになった。

もしかすると、また感じ方が変わるかもしれない。それくらい底の割れない香りともいえる。

 

ダン ラ ポー(ムスク×レザー)

ルイヴィトンの最初期7作品には、すべてレザーの香りがあしらわれていた。

そのなかで、このダンラポーのみ、唯一、実際のなめし革から抽出したオイルが使用された、ジャック・キャヴァリエがヴィトンに捧げた香り。

そして、この天然レザーエッセンスがとにかく素晴らしい。

時間と共にレザーを構成する要素(ウッディ、アンバーなどの合成香料)が見せることなく、肌に馴染む、いや肌に溶け込むのだ。そのレザーエッセンスに、なめらかなムスク、甘酸っぱいフルーティ、みずみずしいフローラルが交わることで、美しい肌の匂いとしてまとまっていく。

そもそもダンラポーとは「肌の内側」の意で、この美しい肌の香りは、麝香ではなく、人の肌から湧き出してくる、究極のムスクの香りに思えてくる。

これほどまで、包まれることで安心する香りを他に知らない。

 

ミルクムスク(ムスク×ミルク)

密かなお気に入り、モルトンブラウンのミルクムスク。

ミルクムスク。なんてストレートなネーミングだろうか。そして、まさにその名前のとおりの香り。

ミルクとムスクは親和性が高く、ムスクにバウダリーな甘さを加えていくと、ミルクに近づいていく。

でもミルクムスクは、白イメージのムスクをキャンパス地に、フルーティな酸味、フローラルのみずみずしいツヤ感を置くことで、どこかヨーグルトを思わせるミルクが、ムスクと別々に感じられる点がとてもユニークだと思う。

このミルクの甘酸っぱさと、ムスクの温もり。それは子供の頃、母親に抱きしめられた時のような、誰かに守ってもらえている安心感に浸ることができる。

だからこそ、心が疲れていると感じた時、密かにミルクムスクに溺れたくなる。

 

 

ムスクのなかでも、特にウッディが絡まった、スキンフレグランス的なムスクが好みで、2本選んでみた。

 

ダンテブラ(ムスク×パウダリー)

フレデリック・マルのムスクと言えば、真っ先にモーリス・ルーセルのムスクラジュールが挙がるのではないだろうか。でもムスクラバジュールは、どちかといえばアンバーの香りだと思っている。

ダンテブラは、野性味の強いムスクラバジュールとは対極的な、静かな静電気を帯びたムスクの香り。
硬いパウダリーに包まれたムスクから、ヘリオトロープのクリーミーな白さを経て、途中、官能的なフローラルの甘さで、一瞬体温が上がる。

そんな官能的な熱の余韻を残したまま、ピリッとしたスパイシーな刺激がウッディに振動や塩味を与え、ふわっとしたムクスに包まれていく。

ダンテブラのテーマは抱擁の香り。高まる鼓動に呼応するように、甘さや塩味がムスクとともに肌の周囲を動いている。

ダンテブラは一人ではなく、誰かと寝ていた記憶がフラッシュバックするような、とても難解なスキンフレグランス。振動するムスクの香り。

 

ガイアック10(ムスク×ウッディ)

東京のシティエクスクルーシブ ガイアック10は、日本人のアイデンティティを的確に捉えた、究極のスキンフレグランス。

ガイアックウッドのウッディの香ばしさから、ムスクの湿気と、オリバナムのミルキなー酸味。静寂で清潔なウッディの表情。

そこから乾いたウッディとオリバナムの酸味が増すことで、どこか神秘的な空気を漂わせながら、柔らかいムスクと調和していく。ウッディとムスクが静かに囁きあうような香りで、拡散することなく、肌に寄り添っている。

繊細さや気遣いという言葉が思い浮かぶ、ウッディムスクの香り。オリバナムの淡いミルキーな甘さに癒される。

過度なストレスから安らぎを得たいとき、また自分自身をリセットしたいときに決まって手を伸ばす、お守りのような香り。