GUERLAIN
SHALIMAR MILLÉSIME TONKA(2022年限定品)
調香師:デルフィーヌ・ジェルク、ティエリー・ワッサー
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HP
ゲラン秋の風物詩、シャリマーのフランカー。
2022年はトンカビーンへの愛を込めたオマージュとして調合され、シャリマーではバニラと並ぶシグネチャーのトンカを強調したとしている。
では、今年のシャリマーはどんな香りなのだろうか。
シャリマーをさらに熟成させたような、濃い琥珀色の液面を眺めながらスプレーすると。
トップはシトラス・アロマティック
最初は、いかにもシャリマーらしいスパイシーを含んだベルガモットの香り。数秒遅れて、アーモンドのビターな硬い甘さが鼻をくすぐってくる。シャリマーのクラシカル感をしっかり尊重しながらも、アーモンドの硬さが少し現代的に寄せている。
ミドルはバルサミック・パウダリー。
鼻先は、クラシカルなベルガモットにコーティングされた、アマレットっぽいアーモンドの甘さ。奥からトンカビーンの鼻に引っかかるような甘さと、バニラの香ばしい甘さ。
今回使用されているのは、トンカビーンアブソリュートとバニラチンキとのこと。このバニラチンキのウッディ調の上澄み部分がトンカと重なり合うことで、なるほどアーモンドキャラメルやチョコレートのような焦げ感を醸し出している。加えて、このバニラチンキの香りは軽やかで、トンカのロースト甘さを上に押し上げるようにアーモンドと重なり、甘い部分の香りはフワッと広がっていく。
そして、その奥からはシャリマー的なアイリス、ローズやジャスミンが感じ取れる。シャリマーと比べるとローズは可愛らしく、ジャスミンはみずみずしく、全体的にはこちらも軽い印象に映る。
ベースはバルサミック・アンバー。
焦げたアーモンドとシャリマーを合わせた香りを漂わせながら、トンカのコクのある豆っぽい甘さや、バニラの真っ白い甘さが強くなっていく。
焦げたウッディレザーのようなアクセントが添えられており、少しチョコレートやナッティな香りも感じられる。
最後は、そのトンカのコクある甘さを、アンバーやムスクが淡い琥珀色に慣らしていくようにドライダウンしていく。
持続時間は6時間以上。出だしはシャリマーらしく、次第にアーモンド、トンカやバニラがメインになりながらも、随所に、そして最後までシャリマーの面影は感じられる。
肌に乗せた方が、ベルガモットやフローラルが前に立ち、それらをアーモンドやバニラやトンカが追いかけているように香る。
シャリマーが持つクラシカルな心地よさ、軽やかな甘さと重い甘さ。でもシャリマー部分がうまく緩和しているため、濃厚なグルマン甘さに溶けていかない。きっとこれから使うシーンが増えてくるのではと思う。
ざっくりとした全体像は、3割がシャリマーのトップからミドル部分、アーモンドが2割、トンカとバニラが4~5割、アンバーが1割弱程度。シャリマーのオリエンタルウッディ部分は削り取らている。
3割程度とはいえ、トップはシャリマーがかなり広がり、元々トンカやバニラもシャリマーに含まれているため、シャリマーフランカーらしい香りだと感じる。
シャリマーの要素をしっかり残しながら、ロムイデアルやローズシェリーのアロマティックな甘さ、さらにはバニラチンキとトンカビーンの化学変化。
まるで過去と現在のゲランをハイライトとしてまとめたような香り。
私自身もシャリマーの香りをこよなく愛しながらも、ほとんど使う機会がない。敷居が高いのだ。結果、フランカーの方が使うことが多い。
ゲランが持つ歴史の奥行き。そして「トンカビーンは自然の驚異です。パウダリーなアーモンドキャラメルやチョコレートの香りを放つこの芳しい小さな豆は、喜びそのもの(公式HP)」を、今年の秋冬は楽しんでみたい。