PEHGALIGON'S
HEARTLESS HELEN（2019年）
調香師：ドミニク・ロピオン
おすすめ度：★★★☆☆
画像：公式HP
ヘレンにとって、愛は戦って勝ち取るものであり、勝者のみが愛される。
そして、自ら愛するよりも愛される方が大好き。
そんなヘレンが、サファリで出会ったテディは、まさに彼女好みの男性だった。
はたして、この恋愛の行く末はどうなるのだろうか。
トップはシトラス・フローラル。
スプレーすると、ジューシーなマンダリンと、オレンジフラワー系のスパイシーグリーンの香り。少し遅れて、ココナッツ調の白い甘さなど、チュベローズの断片がその姿をちらつかせる。
ミドルはフローラル。
マンダリンのオレンジ甘い部分を色濃くさせながら、それ以上にチュベローズのコクの強いフローラル感が増してくる。チュベローズのツーンとしたフローラル感は、オレンジ甘さと重なることで、華やかと、若々しさが共存している。フルーティではなく可愛らしいシトラス甘さとの組み合わせが、チュベローズの新たな一面を感じさせる。
さらに奥からは、グリーンやアーシーを含んだチュベローズが香ってくる。時間の経過とともに、このツーンとしたフローラルは鋭さを強め、オレンジを飲み込み、チュベローズの官能性が前に出てくる。と思いきや、うっすら漂うアーモンドやココナッツの香ばしい甘さが、官能的な香りの広がりを、さりげなくブレーキのような役割を果たしている。
それでもどこかにまだフレッシュな甘さをちらつかせながら、奥のアーシーな部分はウッディ感を増していく。
ベースはウッディ。
フレッシュなチュベローズに包まれたアーシーなウッディは、ウッディ感を強めていくことなく、アーモンドミルクにも似たまろやかな甘さに包まれ、マイルドに印象に移ろっていく。
そして、ほんのり焦げ甘いチュベローズの香りから、ゆっくりとドライダウンしていく。
持続時間は5時間程度。スプレー後1時間くらいは、ジューシー甘いマンダリンとグリーン強めのチュベローズとのせめぎあい。後半はフローラル感を増したチュベローズと、ほんのりビターな甘さをと調和していく。
マンダリンと相性の良いオレンジフラワーを軸に、チュベローズの要素を加えたような香り。爽やかで、甘さが軽いため、冬以外は季節を選ばずに使えるのでは。
またチュベローズをしっかり感じながら、その前後をオレンジやクリーミーなウッディで嗜好を整えている。かなり使いやすいチュベローズの香りだと思う。
ヘレンについて、抗えない魔性の香りで、自信に満ちていて、男性を夢中にさせてしまうことを、彼女自身が知っていると書かれている。
それを読んで、完全なる箱入り娘だなと感じてしまう。
官能的でありながら純真無垢な少女のような一面は確かにある。でも、嗜好の良さも押さえられているため、思わせぶりの枠を出ない、決め手に欠ける香りとも言える。
結局、テディはヘレンの仕掛けた魔法にはまることはなかった。
彼はヘレンのことを、ついに理想の彼女に出会ったと思ったけれど、彼が恋に落ちたのは別の男性だった。
なせなら彼もハンターを演じていただけだったのだから。
