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ブーディカ ザ ヴィクトリアス:ヒロイン

BOADICEA THE VICTORIOUS

HEROINE(2019年)

調香師:不明

おすすめ度:★★★★☆

 

画像:公式HP

 

憧れのヒロイン。

ヒロインとは、映画やドラマ、アニメや小説の女性の主人公であり、そのストーリーの中心人物。観客や読者から共感を得られることが想定されており、良い性質を備えて描かれているとのこと。

 

私にとって、このブーディカ ザ ヴィクトリアスのヒロインは、そんなヒロインの要素が全て備わった香りのように感じられる。

 

2022年サロンドパルファンで、華々しく日本に登場したブーディカ ザ ヴィクトリアス。

2008年に創業されたイギリスのラグジュアリーフレグランスブランドで、約2,000年前にローマ帝国と戦った古代ケルト族の女王「ブーディカ」の美しさ、強さ、気高さからインスパイアされたとのこと。

調香師はクリスチャン・プロベンツァーノとジョン・スティーブン。最高の素材を追求して調香された香りは卓越性をもたらし、世界中のVIPを魅了しつづけているとのこと。

象徴的なボトルのシールドは、英国最古のピューター工房「エー・イー・ウィリアムス」の職人によってそれぞれ1点ずつ手作りされている。

なかでもガラスボトルを使用していないヒロインの銀色の輝きと深みは、伝統的な趣きがあり、異彩を放っていた。


それでは憧れのヒロインはどんな香りなのだろうか。

 

トップはシトラス・フルーティ。
スプレーすると、彩り鮮やかなオレンジの甘さを、グリーンがかったみずみずしいベルガモットが上品にまとめている。ほんのり含んだピーチやカシスが、可愛らしさや初々しさをさりげなく演出しているようなオープニング。
 
ミドルはフローラル・パウダリー。
そこから一気にフローラル感が溢れ出す。爽やかなオレンジの甘さや凛としたベルガモットを漂わせながら、ローズの華やかな明るさと酸味、エレガントなジャスミンの美しさに、ネクタリンにも似た蜜甘さを合わせたフローラルブーケの香り。
バイオレットのパウダリー感で女性らしく上品に包み込みつつも、グリーンアップルのみずみずしい滴がアクセントとして添えられており、どこか若々しい。
さらに奥からバニラの甘さ、アイリスの柔らかい深みが、フローラルブーケの女性らしさを加えて広げていく。
 
ベースはバニラ・ムスク。
フローラルバニラのなかに、ピーチ的な甘さが感じられる。フローラル、フルーティ、バニラの甘さや酸味が入り乱れ、でも全体的なトーンは清楚で儚い。
やがて、アイリスベチバーの湿り気のパウダリー感や、淡いムスクに包まれ、最後はウッディを帯びた真っ白にバニラに、微かにフローラルを感じながらドライダウンしていく。
 
持続時間は6時間以上。2時間くらいかけて、フレッシュなフローラルが色とりどりな輝きを放ちながら拡散し、静かなフローラルの柔らかい甘さに浸っていく。

 

濃厚なバニラは、その甘さを前面に出すのではなく、あくまでシトラスやフローラル、そして隠し味的なフルーティの添え役的な存在として、それぞれの色彩を鮮やかに引き出している。そう考えると、景色が色付いた、春夏秋の日中に映える香りではと感じる。

 

絵に描いたような女性らしいフローラルブーケの香り。

そして、この香りがヒロインの名に相応しいのは、フローラルブーケの厚みや広がりだけではなく、バランスの良さにある。

目がくらむほどの花束感に包まれながら、爽やかなシトラス、甘酸っぱいフルーティ、早摘み感を演出するグリーン、エレガントなパウダリー、そして純白のバニラムスクと静かなアイリス。

どの角度から触れても、そのどれもが女性的であり、ポジティブでハッピーなオーラに溢れ、気品がある。

 

ヒロインとは、どんな相手からも共感を得られるように想定された存在。

そして、どんなストーリーでもヒロインの周りには、ヒロインに魅了される相手(男性)が存在している。

 

つまりヒロインは、相手から憧れのまなざしを浴びることが想定された香り。

男性からすれば、これ以上女性らしい香りを見つるの難しいのではと思えてくる。