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男性が魅せられたバニラの香り7選

 

以前はバニラの甘い香りが苦手だった。

 

苦手のいうのは、肌に乗せると甘い香りが立ちすぎて、その甘さに酔ってしまうから。香りそのものは好きでも嫌いでもなかった。

ところが、フレグランスの旅を始め、多くの香りと出会っていく過程で、徐々にその固定観念がはがされていく。一言でバニラの香りといっても、バニラの香りそのものの質や、バニラフレグランスとしての完成度はピンキリで、極上のバニラの香りに触れてしまうと、この香りに包まれてみたいという衝動に抗えなくなる。

そうやって、一枚、また一枚と甘い香りが苦手という観念がはがされていく感覚は、フレグランスの旅を続けていくなかでも、特に楽しい時間だった。

 

今回は、特に魅せられた7つのバニラの香りを、男性目線で選んでみた。

 

 

アンジェリーク ノワール(ゲラン)

バニラといえば、やはりゲランではないだろうか。ゲランのバニラからは、素材の確かさと歴史の重みが伝わってくる。

そんなゲランのバニラのなかでも、このアンジェリークノワールは異端児であり、そして革新的でもあるバニラの香り。なぜなら、バニラの相手に、対極的とも思えるハーバルグリーンなアンジェリカを選んだから。

その結果、濃厚な甘さとは異世界にある、爽快かつハンサムなフレッシュグリーンバニラの香りが生まれた。

もし史上最高のバニラの香りを1本選ぶとしたら、私は迷うことなく、このアンジェリークノワールを選びたい。

 

ジャージー(シャネル)

個人的にもっとも溺愛するバニラの香り。

ラベンダーとバニラを重ねたシンプルな構成、でも主役はバニラ。

硬質なラベンダーの奥から放たれるバニラの香りは、ラベンダーのアロマティックの余韻や柔らかいムスクに包まれることで、スタイリッシュな印象と清潔な甘さが共存している。

ジャージーは「自由」をコンセプトにした香り。メンズフレグランスによく使用されるラベンダーと、パウダリーなバニラムスクを組み合わせ、性別を問わない透き通るようなバニラの香りが創られている。

パウダリーな甘さに包まれながらも、その全体像はとてもクール。なかなか手放せない真っ白なバニラの香りであり、何回肌に乗せても魅せられる香り。


ドゥーブルヴァニーユ(ゲラン)

バニラを得意とするゲランが創り出した究極のバニラ的な存在。

それはダブルバニラの名のとおり、フレッシュとビターの二重奏のバニラの香り。

バニラが持つ芳醇な甘さを軸に、フレッシュ、アロマティック、華やか、大人らしいビターな味わいなど、様々な表情が現れる。飽きることのないバニラの香りだと思う。

何よりも、フレッシュなアロマティック感、ラム酒がアクセントとなり、さらには力強いアンバーで仕上げられているため、男性でも安心してバニラの甘さに浸れることができる。

 

ヴァニーユ44(ル ラボ)

ヴァニーユ44は、香水の都パリのシティ エクスクルーシブだけあり、とても都会的で洗練されたバニラの香りだと思う。

骨格はバニラに、白イメージのウッディやムスク合わせた香り。そこに爽やかなシトラスや、清潔なアルデヒドで飾り付けすることで、バニラの白い甘さやウッディの香ばしさがフワッと舞う。

白いウッディにバニラが絡まり、それらをシトラスが明るく広げていくため、特に空気が乾燥した晴れた日にとても映える。おしゃれでユニークなバニラの香りだと感じている。

 

コントロモワ(ルイ・ヴィトン)

コントロモワには、マダガスカル産バニラ抽出液、マダガスカル産バニラエッセンス、タヒチ産バニラの3つの異なる香りのバニラが使用されている。

ところが、そのバニラが真正面から主張することなく、パッとした印象はフローラルやフルーティの香りを装っているため、とても使いやすい。

そして、奥の方から官能的でとろけるようなバニラの甘さが漂い、甘ったるくなると思いきや、そのバニラの甘さもココアの苦みで隠されている。

最高級のバニラ素材を使用しながら、バニラは主役ではない。贅沢に創り込まれたフレッシュバニラの傑作だと思う。

 

タバコバニラ(トムフォード)

いつかこのタバコバニラを使いこなしてみたい。

攻撃的なスパイシーの刺激、芳醇な洋酒のようなドライフルーツの甘さを、ビターなタバコと、バニラの深みが覆っていく。どっしりとした渋さと色気が交錯する大人の香りだと思う。

ここまで男らしい渋さと、色気が強いと、使うシーンが思い浮かばない。個性が強すぎて、なかなか出番がない。

そしていつも思う。憧れは憧れのままでいい。何かに憧れることこそが一番大切なのではと。

 

シャリマー(ゲラン)

シャリマーはフレグランスという世界の奥深さと、バニラの素晴らしさを教えてくれた香り。

スプレーしたその瞬間、シャリマーの世界に誘われる。バニラとベルガモットを中心に、シトラス、フローラル、バルサミック、ウッディ、スパイシーなど個々の素材がパッと花開く、万華鏡のような香り。

万華鏡は一度見た景色はもう二度とみることができない。シャリマーもかぐたびに新たな発見があるくらい香りが複雑。でも軸はぶれない。

例えば、次から次に違う香りをかいでいると、香りの洪水に流されてしまい、知らないうちに嗅覚が鈍化しているなと感じる時がある。

そんな時、シャリマーをかいでみる。シャリマーの香りをなぞっていくと自分の鼻がリセットされる。

確固たるシャリマーらしい香りの軸と、変幻自在な香りの表情をあわせ持った香り。