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ルイ・ヴィトン:LVラバーズ

LOUIS VUITTON

LV LOVERS(2024年)

調香師:ジャック・キャヴァリエ

おすすめ度:★★★★☆

画像:公式HP

 


ヴィトンの最新作LVラバーズ(以下ラバーズ)は、イマジナシオン(2021年)以来のメンズフレグランスで、イマジナシオン以上によりジェンダーレスな香りになっている。

メインとなっているサンダルウッドの影響で、初見はオーアザール(2018年)と似ていると思った。でもかぎくらべてみるともちろん違っていて、ラバーズではメンズらしいキャラクターがかなりそぎ落とされている。

 

「太陽の光が降り注ぐ時、あなたは何をしますか?」ファレル・ウィリアムス

ラバーズはメンズ クリエイティブ・ディレクターのファレル・ウィリアムスとジャック・キャヴァリエによるクリエイティブな対話から生まれた。ジャック・キャヴァリエは「LV Lovers」のフィロソフィーと共鳴しながら、生命におけるすべての出発点である光の爽快感溢れるパワーに焦点を当て、肌を照らす太陽の香りを他に類を見ないフレグランスとして表現したとしている。

「太陽の光というテーマから、光合成を香りで表現することを思い付きました。それは生命におけるすべての出発点ですから」ジャック・キャヴァリエ・ベルトリュード

加えて、ラバーズはジャック・キャヴァリエの娘カミーユとの初の共作となっている。

 

光を讃えたテーマ、光合成を表現した香りとはどんな香りなのだろうか。

 

光合成をイメージしたという、光に当てると七色に反射するボトルをスプレーすると、トップはスパイシー・グリーン。

スプレーした瞬間のみ、いわゆるメンズフレグランスらしい顔つきを見せる。ベルガモットのほろ苦い果皮感をガルバナムが、果実味をジンジャーが引き立たせる。このベルガモットの残像を感じながら、奥からムスクを思わせる柔らかくもクリーミーなサンダルウッドの甘さが広がり、それをガルバナムやジンジャーのスパイシーグリーンで輪郭として縁取っていく。

 

ミドルはウッディ・スパイシー。

ガルバナムのグリーンはジンジャーの爽やかな側面と結合し、ジンジャーの土っぽさはガルバナムのアーシーな側面と結合することで、表層は清々しいナチュラルな印象が広がっている。

中心のクリーミーなサンダルウッドに軽やかなオゾンを加わえることで、まるで真っ白い雲に太陽の光を当てたようなイメージのソーラーノートとしてまとまっていく。

雲の中から垣間見える太陽の光と、生き生きとしたグリーンやフレッシュなスパイシーの心地よいナチュラル感が点在する香り。ゆっくりと時間をかけながらグリーンやスパイシーはソーラーノートに溶け込んでいく。

 

ベースはウッディ。

時間と共にソーラーノートも溶け込むことで、少しパウダリーな印象になったサンダルウッドは果てしなく広がる。その奥から、ファレル・ウィリアムスの出身地をオマージュした、ナチュラルなバージニアセダーの深みがウッディらしさを与える。そんな太陽やウッディの温もり、高揚感に包まれながらドライダウンしていく。

 

真夏に使用しても、ゆうに8時間以上持続する。

太陽の光を表現した香りだけあって、季節を問わず似合うと思う。なによりもウッディの香りでありながら、もはや亜熱帯化した日本の夏でも重く沈むことなく使用できるのは、かなり貴重なのでは。

 

実際に使ってみるとサンダルウッドの質の高さを感じ取れる。このクリーミー強めのサンダルウッドに、グリーンやスパイシー、さらには軽やかなオゾンで味付けすることで、雲から差し込む木漏れ日を表現した。クリーミーな部分に透明感を与えるため、隠し味でムスクも相当使われていると思う。それらの要素を散りばめることで、ボトルのイメージそのまま具現化したような、光合成の香りに仕上げている。

逆説的にいえば、かなり抽象的な香りなので、キャラクターに乏しい。ファッションにそっと寄り添うようなヴィトンのフレグランスらしい香りだと感じる。

 

腕に使用するとかなり拡散し、ウッディ部分もしっかり見えて、ラグジュアリーな印象になる。コンセプトどおりに楽しみたいのなら、下半身に使うことをお勧めしたい。光合成のオーロラを纏っているようで気持ちがいい。

 

また、光合成をイメージした香りのため、例えば、パシフィックチル(2023年)などのシトラス系の香りの上からラバーズをまとうと、特徴のシトラスやグリーンの鋭さや甘さが和らぎ、ナチュラルな印象や奥行きを与えてくれる。

 

太陽の光が降り注ぐ時、私も香りの光合成を楽しみたいと思う。