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ゲラン:ロムイデアル コローニュ フォルテ

GUERLAIN

L'HOMME IDEAL COLOGNE FORTE(2025年) 限定品

調香師:デルフィーヌ・ジェルク

おすすめ度:★★★★★

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画像:公式HP

 

廃番となってから5年以上経つ「ロムイデアル コローニュ(2015年)」は、今でもお気に入りのシトラスコロンの1本だ。

ありふれたシトラスコロンに、アーモンドのアロマティック感や甘さを添えることで、チャーミングな印象が付与され、シトラスコロンの清潔さから誠実な印象に変化していく。ティエリー・ワッサーのセンスが光る逸品だと思う。

www.captain-dfragrance.com

 

あれから10年、コローニュのフォルテバージョンが登場した。そのテーマは「コロンのようにフレッシュで、EDPのように力強い香り」と矛盾している。果たして、見事に調和しているのか否か。

 

トップはシトラス。

スプレーした瞬間、かなり鋭利なシトラスミックスが鼻を刺す。ここまで鋭く分厚いシトラスは滅多にないので、ファーストインプレッションで、この香りはただのコローニュでないことに気づく。

すがすがしく冷たい印象のグレープフルーツを中心に、ベルガモットのグリーン味やアロマティック感、そしてレモンの果皮を絞ったような苦み、さらにジンジャーのアクセントを含ませることで、重厚で男らしいシトラスが力強く拡散する。

 

ミドルはアーモンド。

シトラスを追いかけるようにロムイデアルの魂、アーモンドが姿をあらわす。公式HPには「熱く冷たいアーモンドアコード」とあるが、どういうことなのか。

序盤のアーモンドは甘さよりもアロマティックな硬さが立っているため、鋭くもどこか冷たげなシトラスと交わることで、全体の印象も冷たい。

少しずつアーモンド甘さが見えてくると、ようやく「ロムイデアル コローニュ」らしさも感じてくるが、シナモンのようなアクセントもあり、もっと複雑なアーモンド感だ。

そんな冷たさやコローニュらしい余韻を残しながら、香りはどんどん温度を上げていく。

ウッディ、おそらくベチバーと重なることで、アーモンドのビターな印象が際立ってくる。シトラスの鋭いトーンと合わさった、研ぎ澄まされたようなアーモンドから、ビターで焦げたような香りが前に出てくることで、冷気から熱気に転調する。

ここから一気にウッディへ駆けあがると思いきや、フランキンセンスの酸味が、バチバチと燃ゆる火種をそっと煙で包み込みながら、もう一度アーモンドの輪郭を縁取っていく。この組み合わせは見事で、他のロムイデアルとはひと味違う、新たなアーモンドアコードを創り出していると思う。

どこかミステリアスなアーモンドは、徐々にウッディの静かな深みに香りを沈ませていく。

 

ベースはウッディ。

鼻先にミステリアスなアーモンドを漂わせながら、重厚なウッディが存在感を増していく。上から硬いベチバー、仄かなサンダルウッド、そしてインセンス。ベチバーは力強く、インセンスは焦げ感も強いが、アーモンドの煙感、さらにはうっすらと香るバニラが香り全体を暗く沈めることなく、灰のような落ち着きを残してドライダウンしていく。

 

鋭くも冷たいシトラスのオープニングから、ミドルの冷たく熱いアーモンドアコードの香りが3時間くらい、全体としては6時間以上も持続する規格外のコロンの香り。

 

純粋にロムイデアル コローニュのフォルテバージョンとして手に取ってしまうと、間違いなく裏切られるのではと思う。

それこそロムイデアル プラティーヌ プリヴェ(2023年)の方が正統なコローニュのフォルテバージョンの香りだと感じる。このフォルテのコローニュ感はあくまでも副題であり、主題はロムイデアルのシグニチャーのアーモンドに対する全く新しい挑戦ではないだろうか。

 

 

「コロンのようにフレッシュでEDPのように力強い香り」「熱く冷たいアーモンドアコード」など、このフォルテは大きな矛盾を抱えている。見事とはいえない、粗削りではあるがなんとか調和させていると思う。

 

「アーモンドの苦みをグレープフルーツの爽やかでフレッシュな香りが昇華し、ベチバーとフランキンセンスがウッディな温もりをもたらします」(デルフィーヌ・ジェルク)


あえてグレープフルーツの爽快感と、ウッディの温もりを過剰に立たせることで、新次元のアーモンドの香りを浮かび上がらせているようにも読める。

 

そのため、最近のフレグランスと比較するとトップ・ミドル・ベースの変化幅が大きく、好き嫌いが割れる香りだと思う。

もしかすると、ここまでシトラスを爽やかにせず、ウッディもビターにしなければ、見事に調和できたかもしれない。

それでも私はこの香りに魅せられる。

冷気と熱気の温度差、フレッシュとビターの対比、そして大胆な香りの陰影。

目の前はもちろん、自分自身にも様々な矛盾や葛藤がある。それら矛盾を抱えながら「理想の男(=ロムイデアル)」を目指して、新たに挑戦していこう。

そんなメッセージが感じられた香り。