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シャネル:N°5 オードゥ トワレット(2026)

CHANEL

N゚5 オードゥ トワレット(2026年)※オリジナルは1924年

調香師:オリビエ・ポルジュ

おすすめ度:★★★★☆

公式HPより

 

N°5 オードゥ トワレット(以下EDT)が新しく生まれ変わると聞いて、「何を今さら」などとは全く思わず、逆にシャネルらしいなと納得した。

おそらくシャネルのフレグランス戦略はかなり明確でココ・シャネルの「美のシンボル化」であり、その絶対条件はN°5を女王の香りとして永遠に君臨させ続けることだと(勝手に)思っている。

 

ちなみに店頭では「今回のリニューアルでは香りは変わっていない」「変わったのはボトルデザインとスプレー」「スプレーが変わったことでよりミストが細かくなり、香りの立ち方が変わった」とのこと(このブログではボトルについては言及しない)。

ところが新しいEDTについて公式HPでは「N°5に新たな視点から光を当て、再発見へといざないます」と書かれている。

シャネルはどのような狙い(視点)から、どこをフォーカスすることで、N°5をどう再定義させたいのか考えてみよう思う。

 

まず「N°5 」パルファムは、シャネル初のフレグランスとして1921年に誕生した。

一方でEDTは、パルファムのアルデヒドを革新的な方法で用いた先見的な調香に対して、Eウッディが色濃く息づく新たな香りとして、1924年に発表された。

 

それでは新しいEDTはどんな香りなのか。

 

トップはアルデヒド。

スプレーした瞬間、アルデヒドのパウダリーな白さが香りを広げる。かいだ瞬間、ああN°5だと認知できるような、得も言われぬ安心感がそこにある。ただこのパウダリー感はとても軽やかで、また軽めのムスクを絡めることで硬さもないのが特徴。そこに軽やかなイランイランやローズ、さらにネロリっぽいフローラルのフックも感じられ、N°5でありながらも、クラシカルに埋没しない工夫が施されているようなトップ。

 

ミドルはフローラル・アルデヒド。

N°5といえば、このアルデヒドに濃厚なフローラルが幾重にも折り重なり、唯一無二の世界観を構成していく。EDTもその世界観を踏襲しながらも、アルデヒドと同様、フローラルのトーンも軽やかだ。軽い順で並べると、みずみずしいイラン、華やかなローズ、主役ジャスミンで、軽やかなパウダリーとイランやローズがかなりしっかり拡散する。奥からは官能的でコクのあるジャスミンが支え、ここまでは完全にN°5の立ち振る舞い。ミドルまでは2時間弱。

 

ベースはウッディ。

ところが2時間くらい経つと、一気にN°5の世界から離れていく。なぜなら、ベースにアルデヒドが全く配合されていないため、いわゆる花々の深みやコクと、重く暗いトーンのアルデヒドとの相乗効果がなく、ミドルまでのN°5らしさはかなり影を潜めてしまうから。

そのため、ウッディが目立つ構成で、このサンダルウッドとベチバーの組み合わせはかなりモダンなウッディの香りだと感じる。仄かなジャスミンのフローラルの余韻とウッディの香りのドライダウンしていく。持続時間は5時間程度で、EDTとしてはかなりロングラスティングだと思う。

 

以前のEDTと比較していないが、今回のリニューアルで、もしかすると香りも変わったのかもしれない、スプレーの変更による香り立ちの変化だけではないのではと推測している。

まずN°5の代名詞ともいえるアルデヒドの重たいトーンを抜去することで、トップからミドルのパウダリーなフローラルがより軽やかにしたのでは。そのためベースは、EDPと明らかな距離感がある。ベースのウッディを目立たせることで現代的にアレンジしてのではと思う。とはいえ、もともとEDTはウッディが色濃く息づく新たな香りなので、大きく変わっていないかもしれないけれど。

 

店頭ではこのEDTと、EDP、L’EAUが並んで置かれている。

公式HPより

 

改めてEDPをかいでみる。トップのアルデヒドとフローラルの絡みが複雑で派手。ミドルのフローラル、特にイランイランのコクやジャスミンのワックス分がかなり濃厚。ベースのフローラルの残香とアルデヒドとサンダルが分厚く、最初から最後までN°5を感じるとことができる。

一方L’EAUは、かなりシトラス、少しアルデヒドの清潔感溢れるトップ。ミドルのアルデヒドと透明感のあるフローラルの組み合わせに「N°5がいる」というイメージ。ベースは上品なフローラルソープ。

EDPの「N°5要素」を100としたら、EDTは60くらい、L’EAUは20くらいではと感じる。

 

こう考えていくと冒頭の「シャネルはどのような狙いから、どこをフォーカスすることで、N°5をどう再定義させたいのか」が見えてくる。

シャネルはN°5と存在を普遍化にしたい。だたしEDPは、N°5そのものをまとうような個性と、クラシカル色の強い香りのため、なかなか新たなユーザーを獲得しにくい。逆にL’EAUはN°5の入り口として、N°5要素を抑えたため、ここからEDPへ進みにくい。もう少しN°5要素の高い、新たな入口が必要だと考えていた。

そのため新しいEDTではN°5の背骨「アルデヒド」をあえてフォーカスした。このEDTのフローラルとパウダリーの組み合わせはN°5らしさもあり、さらに抜け感もあり、本当に美しい。この香りであればクラシカル過ぎず、日常使いもできるのではと感じる。

 

結果、新しいシャネルN°5 EDTは、アルデヒドを再解釈し、さらにウッディを見えやすく配置することで、N°5の個性は大切にしつつ、若い世代や現代のライフスタイルに、N°5がどのようにフィットするかを再定義した香りだと思う。