GUERLAIN
SHALIMAR MILLÉSIME ROSE(2026年 限定品)
調香師:デルフィーヌ・ジェルク
おすすめ度:★★★★☆


シャリマーとゲルリナーデを融合させたミレジムシリーズ。
ヴァニラ(2021年)、トンカビーン(2022年)、アイリス(2023年)、ジャスミン(2024年)に続いてローズは第5弾にあたり、いよいよ残すはあとベルガモットとなった。このシリーズはシャリマーとゲルリナーデの融合と謳いつつも、あまりシャリマーらしくない香りも多い(もっともらしかった香りはトンカでそれでもシャリマー度は30%程度)。シャリマーという舞台で、ゲランが誇るゲルリナーデの発表会という印象が強く、だからこそ人気のあるシリーズだと思っている。
そしていよいよ、シャリマーとゲルリナーデにとって欠くことのできないローズが舞台に立った。「シャリマーの奥深くで、花の女王が複雑な魅力のすべてをあらわした香り」とはどんな香りなのか。
トップはベルガモット・ローズ。
スプレーすると、みずみずしくも透明感溢れるベルガモットと、ベルガモットにエスコートされるようにローズがいきなり花を咲かせる。
まず、このベルガモットが非常に美しい。シャリマーオリジナルにあるクラシカルな苦みや雑味がなく、透き通るような別物のベルガモット。もしミレジムベルガモットが、このベルガモットであれば相当期待できる、そんな伏線すら感じる香り。
そして主役のローズ。ベルガモットと融合することで、朝露に包まれたローズの花びらと、緑を含んだ薄ピンク色のローズの香りに。この咲いたばかりのローズの香りは、ローズウォーターだ。
何よりも、スプレーした瞬間、この香りにはシャリマーの断片がほとんどないことに気づく。が少し遅れて香ってくるアーモンドのほろ苦い甘さが、どこかシャリマーのバニラらしさにも感じられ、また現代的でフェミニンな印象も付与している。
ミレジムローズのトップは「一鼻惚れ」するレベルの香りだと思う。
ミドルはローズ・ウッディ。
今回のミレジムローズでは、3種類のローズエッセンスが使用されている。
まずはトップのローズウォーター。そしてミドル以降のグラース産センティフォリアローズ アブソリュートと、ダマスクローズエッセンス。特にセンティフォリアローズは、ゲランと長年パートナーシップを構築している農園のものを使用しているとのこと。このミレジムローズの主役は文句なしで、センティフォリアローズだと思う。
トップのフレッシュローズに、センティフォリアローズの優美な立ち振る舞いやハニー甘さが溶け出していく。アーモンドがモダンかつピンク色に装飾することで洗練さを高め、ローズシェリーの香りが鼻をよぎる。ゲランらしい美しくも可愛らしいローズの表情と、その奥から深紅のダマスクローズの影がよぎる。
このダマスクローズは、インセンスとラズベリーでかなり暗くにデフォルメされている。
表層のセンティフォリアローズとダークなダマスクローズとの陰影。さらにその奥から香るバニラの白色とローズウッディとの陰影。
シャリマーの象徴でもあるバニラのビーンズ甘さは、ミレジムローズではかなり抑えられている。むしろバニラ甘さは主張しすぎずに、ローズの陰影を引き立てることで、コントラストをはっきりさせたドラマティックなローズの香りが完成している。
ダマスクローズをナエマピーチ方向ではなく、少し乾いたベリーやインセンスに振った点は賛否が別れるかもしれないが、このベリーやインセンスはうまくバニラと調和しているように感じる。
ベースはバニラ・ウッディ。
ベリーローズとバニラが重なり合い、インセンスやパチョリ、サンダルウッドの香ばしいウッディの暗さが、パウダリーなバニラローズの赤さを最後まで浮かび上がらせて、そのままドライダウンしていく。
トップからミドルまでが2時間くらい、ベースは5時間くらい持続する。
あまり季節を問わない香り。それでもセンティフォリアローズ(ローズ ドゥ メ)を中枢に置いた香りのため、5月を中心に春から初夏、そして秋は特に映えるのては思う。
ミレジム ローズについて、デルフィーヌ・ジェルクは「この上なくセンシュアルで深みのある香りの構成の中で、ローズが持つ自然な気品を際立たせたいと考えました(公式HP)」とコメントしている。
正直、オリジナルのシャリマーはそこまでローズは主張してこない。だからこそミレジムローズは、ゲランが、ゲルリナーデが誇る、ローズという花の女王に思い切り傾倒することができたのだと思う。
最上質のローズをよりナチュラルに、そしてエレガントに、さらにはドラマティックに。ミレジムローズは、シャリマーいうスポットライトでローズを照らすことで、ローズの気品を際立たせ、さらにシャリマーの新たな可能性を提示した香り。



