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ル ラボ:ガイアック10

LE LABO

GAIAC 10(2008年)

調香師:アニック・メナード

おすすめ度:★★★★★

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画像出典: 公式HP

 

日本人なら、ぜひ一度は試してほしいルラボのガイアック10。

日本をコンセプトにした香り、日本の素材を使用した香り、日本の〇〇をイメージした香りなどが増えてきている昨今、日本の外面ではなく、日本人の内面というかアイデンティティを的確に捉えた香りはこのガイアック10のみではと感じている。

 

ガイアック10は、シティ エクスクルーシブ コレクションの作品で、このコレクションはルラボが出店している都市の限定の香り。

そしてガイアック10は日本を象徴した、東京限定の香り。

 

私がルラボに強い興味を持ったのは、ネットで読んだ創業者のエディ・ロスキーのインタビュー記事がきっかけ。彼自身が実際に体験したという華道について、ただ花を観るという結果だけではなく、そこに辿り着くまでのプロセスをすごく大事にすることを良い文化だと感じる、その感性にとても共感した。

さらに、2007年、創業の地ニューヨークにつづく2店舗目の路面店を、パリやロンドンでなく、フレグランス砂漠のこの日本(代官山)を選んだことに、強い好感を抱いた。

 

そんなエディ・ロスキーが創り出した日本の香りはどんな香りだろうか。

 

まず、ガイアック10にはトップが存在しない。店頭でムエットにつけても、繊細すぎて店内にあるさまざま香りに埋もれてしまい、ほとんど香りを感じ取れないため、外で香りを嗅いでくださいと言われるほど。

実際には、アルコール臭が飛んだ後、ガイアックの少しだけスパイシーで、硬さのあるウッディ感に、ウエットなムスクが合わさった、スモーキーなウッディ・ムスキーな香り。
スモーキーな中に、少しずつオリバナムのミルキなー酸味が加わり、透明感、清潔感が増していく。

 

2時間ほど経つと、ガイアックとセダーウッドのドライなウッディ感が増して、さらにオリバナムの酸味がアクセントになることで、柔らかいムスクに沈むことなく、硬いウッディが香る。付けてから2時間くらいは至福の時間を味わうことができる。

 

さらに2時間ほど経つと、オリバナムが弱まり、ウッディの余韻と、柔らかいムスクの香り。その後は儚げなムスクの香りが6時間以上続く。

男性にはムスクの香りに気づきにくい人が多いという。もしかすると、ウッディが抜けた後のムスクの残香が分からないのではと感じてしまうくらい、柔らかいムスクの香り。

そもそも香り立ちもソフトなため、両腕に1プッシュずつだと、周囲の人にほぼ気付かれないレベルだ。

個人的には、ムスクに包み込まれてしまう手前の、ガイアックとオリバナムが肌に寄り添って、安らかな癒しを与えてくれるところが特に好みだ。

 

この香りは禁断の香りではないだろうか。
なぜなら、ガイアック10のコンセプトは、賦香率が30%とパルファム級に高いも関わらず、その香りは周囲にフレグランスを付けている印象を与えないくらい、繊細さや気遣いをテーマにしているから。

トップに効く香りもなく、賦香率が高い=アルコールが少ないため、香りはほとんど拡散しない。電車などで近くにフレグランスを付けている人がいると、完全に負けてしまう。鼻に刺激を与えず、その人物をほわんと包み込むような香りだ。

周囲に気付かれることなく、自分だけが柔らかくて、少しだけ甘さのあるウッディやムスクに包まれているようで、完全に自己満足の世界。贅沢なフレグランスだと思う。

 

しかし、フレグランスが好きな人間としては、この素晴らしい香りを、少しだけ広範囲に、少しだけ強く香ってほしいと願ってしまう。

いや違う、このフレグランスのコンセプトはそうじゃない。このフレグランスを理解するのには、もう少し時間と知識が必要だと感じる。

 

時々、過度なストレスから安らぎを得たいとき、また自分自身をリセットしたいときに決まって手を伸ばす、お守りのような香り。