LE LABO
VANILLA 44(2007年)
調香師:アルベルト・モリヤス
おすすめ度:★★★★☆
画像出典:公式HP
パリのシティ エクスクルーシブ、ヴァニーユ44。
香水の都、パリ。ルラボはパリの香りについて「上質なパシュミナ製のセーターと共に身にまとった時にバニラバーボンを発するような、ほのかなアンバー系、インセンス系、ウッド系のセクシーな香り。いわば、変装したバニラです」と例えている。
では、変装したバニラの香りとはどんな香りだろうか。
トップはシトラス・アルデヒド。
スプレーすると、マンダリンオレンジの明るさと、ベルガモットの酸味を合わせた、爽やかなシトラスミックス。そこにバニラの甘さ、ムスクの柔らかい白さをほんのり加えた、白色アルデヒドの香り。清潔で優しく、そしてどこか懐かしさのあるオープニング。
ミドルはウッディ・ムスク。
鼻先ではフレッシュなシトラスと、バニラの白い甘さを漂わせながら、奥からガイアックウッドとムスクを組み合わせた香りが、オレンジバニラの白さにスモーキーな深みを与えていく。特にガイアックウッドの樹脂を思わせるなめらかなウッディ感がとても心地よく、その上をバニラの甘さやムスクの白さが舞っているようなイメージ。
さらにインセンスが少しずつウッディに深みを与えることで、バニラムスクの白さが引き立っていくような香り立ち。
ベースはバニラ・ウッディ。
ウッディやムスクにエスコートされ、ようやく主演のバニラを中心とした香りとしてまとまってくる。
上の方のムスクと共演したバニラはシトラスの明るさを連れて、おしゃれで都会的なイメージを醸し出している。一方、下の方のウッディと共演したバニラは、どこかベンゾインのような香ばしい甘さとなり、ナチュラル感があり、どこか癒されるような香り。
そしてバニラムスクと、バニラウッディが重なり、さらにアンブロクサンの深みを加えることで、バニラの白くなめらかな甘さから、ザラザラとした香ばしい甘さに変化しながらドライダウンしていく。
フレッシュなシトラスからスタートして、ムスクの柔らかさ、ウッディやアンバーの深みのある香りへの流れを横目に、終始バニラの香りを漂わすことで、シングルノートに近い印象のまま、6時間以上持続する。
軽やかなバニラが舞っているような香りで、湿度の高い時期に使うと、このバニラの軽さが沈んでしまうのではと感じる。やはり似合うのは秋から冬の、空気が刺すように乾燥した時期ではないだろうか。
それにしても、パリのシティエクスクルーシブの香りをバニラにしたのはなかなか挑戦的だと思う。
そこはルラボでも自虐的に「パリ限定でこのテーマを発表するのはスキャンダラスだと言う人もいるでしょう。それがすでにやり過ぎだと言い、バニラがバニラの香りを発するという正常の名の下で、禁止しようとする人もいるでしょう(公式HP)」と書かれている。
パリはフレグランス界の横綱、ゲランとシャネルの創業の地。
特にゲランはパリに対する愛着、そしてバニラに対するこだわりが強く、ゲランのバニラ素材を超えるバニラを持っているブランドはないと感じている。
さらに、ゲランのバニラの代表作ドゥーブルヴァニーユと、ヴァニーユ44は共に2007年に発売され、元々ドゥーブルヴァニーユはゲランのパリ・ブティック限定の香りだったとのこと。凄い偶然?だと思う。
ルラボのヴァニーユ44は、厳選されたバニラの上質な味わい堪能するのではなく、ルラボお得意のウッディムスクにバニラというドレスで着飾った香り。随所でファッションとして、官能的なバニラの甘さが感じられるものの、そこが本質ではないため、バニラの甘さに溺れていかない。もし、ヴァニーユ44にバニラの濃厚な甘さを求めていたとしたら、この変装したバニラに完全に裏切られることだろう。
ヴァニーユ44は、フレグランスの歴史を築き上げてきた先人達への敬意と、私たちは先人達と違う歴史を創り上げていくという、ルラボのフレグランスに対する高らかな宣誓だと思っている。ド真剣であるけれど、茶目っ気を見せながら。
「パリはヴァニーユ44の街でもあります!(公式JPより)」