LE LABO
POIVRE 23(2008年)
調香師:ナタリー・ローソン
おすすめ度:★★★★☆
画像出典:公式HP
ポアブル23はロンドンのシティエクスクルーシブで、ポアブルとはペッパーの意。
はたして、ペッパーという名のフレグランスとはどんな香りだろうか。
トップはスパイシー。
スプレーすると、香ばしさを通り越してもはや苦いブラックペッパーの香りにまず驚く。名前負けしない、期待通りの香り。
ゴリッとしたブラックペッパーを軸に、ピンクペッパーのツーンとした刺激、さらには花椒のようなピリッとした刺激が折り重なったスパイスミックス。
ブラックペッパーの強い苦みが、ほんのり香るインセンスの焦げ感と合わさることで、スパイシーの鋭さよりもむしろ温かみを感じさせる。まるで暖炉の前でバチッバチッと木が燃え出すようなオープニング。
ミドルはウッディ・バルサミック。
ブラックペッパーにインセンスが添えられたスパイシーウッディを軸に、ラブダナムの樹脂的な甘さがどんどん強くなっていく。
ここら辺まで、奥に潜むウッディはセダーウッドではと思わせぶりをするため、どんどん香りが暗くなっていくと思いきや、実際は暗さが抜けて、ガイアックの明るさのあるドライなウッディ感が表に出てくる。さらにバニラの柔らかな甘さと合わさることで、白っぽさが広がっていく。
この香りの変化は特に素晴らしく、なかなか言葉で表現ができない。
ベースはオリエンタル・ウッディ。
鼻先はペッパーとインセンスに、ラブダナムとスチラックスのクセを合わせた焦げ感に、奥からはサンダルウッドとバニラのなめらかなオリエンタルの香り。
時間が経つにつれて、なめらかな甘さが増していくが、ドライなウッディ感が甘さより上に香るため、スパイスのような表情を最後まで残していく。
トップの香ばしいペッパーから、そのペッパーを焦がしながら熟成させたようなウッディの香りまでが3時間程度、そこからオリエンタルのやわらかい甘さが広がっていく香りは8時間以上持続する。
肌に乗せた方が、ラブダナムのクセのある甘さや、スチラックスのスモーキーさがかなり増すため、トップ・ミドル・ベースの香りの変化がはっきりする。
このラブダナムの樹脂特有の香ばしい甘さが、ペッパーの苦味とオリエンタルの甘さをうまく結びつけていると感じる。
夜につけても香りの変化を楽しむには時間が足りない。
でも下半身に1プッシュでもしっかり香るため、平日の朝に使うのは少し難しいかなと思う。
秋から冬の休日の昼過ぎから夜にかけて、徐々に乾燥していく冷たい空気のなかで、暖炉のような刺激とぬくもりで包まれたい。そんなシチュエーションに合う香り。
なぜペッパーという名のフレグランスを創ったのか。それは、「スパイス中のスパイス、調香の世界では広く愛用されていますが、ルラボはそのペッパー本来のもつ価値をかたちにしたかった」とのこと。
ではなぜその香りがロンドンなのか。それはよく分からない。
英国紳士の香りかといえばそれほどメンズではなく、むしろ英国紳士淑女の香りの方がイメージに近いのではと感じる。