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ゲラン:アクアアレゴリア パンプルリューヌ

GUERLAIN

AQUA ALLEGORIA PAMPLELUNE(1999年)

調香師:マチルド・ローラン(ジャン=ポール・ゲラン)

おすすめ度:★★★☆☆

 

画像:公式HP

 

パンプルリューヌは、アクアアレゴリア コレクションの最初の5作品の一つ。

毎年新作が発表され、ラインナップも増やしたり減らしたりを繰り返しながら、熾烈なレギュラー争いが繰り広げられているなかで、このパンプルリューヌは20年以上もレギュラーの地位を保ち続けている。アクアアレゴリアの代表格といっても差し支えないのではと思う。

 

グレープフルーツの果実だけではなく、果皮感もしっかり含んだ香り。時間が経つにつれて、果皮の苦みがはっきり残るため、好き嫌いが分かれるかもしれない。

 

トップはシトラス。

スプレーすると、グレープフルーツの乾いた果皮感や、レモンの甘酸っぱさが鼻を刺す。そこにみずみずしいベルガモットを重ねた、ジューシーで爽やかなシトラスミックスの香り。

 

ミドルはシトラス・アロマティック。

グレープフルーツ果皮のワタのような香りを立たせながら、アロマティックなカシスの甘さや酸味が、グレープフルーツの果実感を上手く表現している。そこにペチグレンのグリーン硬さが香り全体を引き締めると同時に、ネロリがシトラスの果実感を広げていく。「搾りたてのフルーツカクテル」という表現がとてもしっくりくる香り立ち。

 

ベースはウッディ。

みずみずしさが減退してくると、グレープフルーツの甘い残香や、カシスの青さ、ペチグレンのスパイシーな苦み、ネロリの酸味が重なり、グレーププルーツの果皮のえぐみにも感じ取れる。そのえぐみを、ビターなパチョリのウッディ感が持続させていくようにドライダウンしていく。

 

持続時間は3~4時間。最初の30分は弾けるようにジューシーなグレープフルーツが炸裂。前半はそこから滴るような果実感を増していく。ここまで1.5時間。

後半は果実のみずみずしさを失いながら、リアルなグレープフルーツの果皮感が前に出てくるようなナチュラルな香り。

 

夏や梅雨の時期の似合う香り。

縦軸はグリーンやスパイシーを帯びた鋭いグレープフルーツ。この鋭さが夏の暑さや梅雨のジメジメにも負けることなく、突き抜けていく。

横軸はアロマティックのみずみずしさやネロリの明るさが広がっていく。この縦軸に横軸のピークが重なる時の果実感が特に素晴らしいと感じる。

 

元々アクアアレゴリアは、ジャン・ポールの幼少期の美しい記憶を感性豊かに閉じ込めた、ゲラン初のコンセプトシリーズだった。自然の美しさと魅惑的な数々の天然素材へのオマージュ。それぞれの素材をしっかり味わい、その魅力を称える。フレグランスとして綺麗にまとめるのでなく、あくまでも主役は素材そのものだ。最上級の素材を調香師の技によって芸術まで高めたラール エ ラ マティエールとは対極に位置する。

 

2022年、アクアアレゴリアはリニューアルされた。

自然の魅力を称えることに留まらず、ゲランのサステナブルのコミットメントの象徴として、最大95%の天然由来成分配合、リサイクルガラス15%以上使用、さらには有機栽培による素材から抽出されたオーガニックアルコールのみが使用されている。確かにリニューアルの方がスプレーした瞬間の香り立ちがソフトで、優しく感じられる。つまり、時代の流れに寄り添う形で進化している。

ところがここ数年、アクアアレゴリアでは重ね付けを推奨している。例えばパンプルリューヌでは、ベルガモット カラブリアやオランジェ ソレイヤとの組み合わせがおすすめとのこと。

しかしそれって、トレンドに寄り添うのではなく流されてない?と感じてしまうし、素材の魅力が埋もれてしまうのではと思ってしまう。