DIOR
DIOR HOMME COLOGNE(2013年)
調香師:フランソワ・デュマシー
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HP
今更ながら、このディオ―ル オム コロンは優れた香りだと思う。
いたってシンプルなムスキーシトラスの香り。シンプルでありながらも、一点の曇りもない空のように爽やか、溢れる清潔感、それでいて安っぽさがない。
性別を問わず、持っていると重宝する1本だと感じる。
トップはシトラス。
スプレーすると、爽やかなレモンと、少しアロマティックなグレープフルーツの香り。メンズコロンらしく、これらシトラスの果皮感がさらに主張すると思いきや、カラブリア産ベルガモットのみずみずしい甘さや酸味が広がっていくことでメンズ感を抑えている。太陽の日射しのように気持ちの良いオープニング。
ミドルはシトラス・フローラル。
シトラスのフレッシュ感が収まってくると、レモンやグレープフルーツの果皮やベルガモットの酸味を残しながら、オレンジフラワーからグリーン系のエグミを取り除いたような、透明感のあるホワイトフローラルがフワッと香り立つ。
このフローラルこそが、モロッコ産グレープフルーツフラワーを水蒸気蒸留により抽出したオイルであり、ディオールオムコロンで初めて使用されているとのこと。ネロリとオレンジフラワーの中間のような香り立ちで、グレープフルーツの硬いアロマティック感を帯びている。このフローラルがとても素晴らしく、オイルそのものを一度かいでみたくなる。
ベースはムスキー。
グレープフルーツ感を残したフローラルに、石鹸調ムスクが調和していく。グレープフルーツの硬さとフローラルの酸味とムスクの組み合わせが、まさに晴れた日に干した、洗いたてシャツのようで、清潔感あふれる香りのままドライダウンしていく。
梅雨から夏にかけて出番の多い香り。夏の甘さも、梅雨のジメジメも吹き飛ばしていくような爽やかさ、清潔感に溢れている。
コロンという名のオードゥトワレで4時間近く持続する。爽やかなシトラスと明るいフローラルが1時間強、その爽やかさや明るさに包まれたまま、清潔なムスクの香りに移ろっていく。
シャネル アリュールオムスポーツ コローニュ(2007年)とよく比較される香り。
アリュールのシトラスやスパイシーはメンズ的で、それをアルデヒドやネロリでシャネルらしい佇まいに仕上げている。
一方ディオールオムは、グレープフルーツやレモンのメンズらしいシトラス感がセーブされ、逆にミドルのフローラル部分が引きしまったメンズ調。そこからウッディに進めず、清潔なムスクでまとめることで、アリュールよりもよりユニセックス寄りな香りになっている。
これだけムスクを効かせると、ファブリック的な香りになってしまいそうだ。
でも香りの中心に、分厚いグレープフルーツフラワーを置いた。もしこれがジャスミンやオレンジフラワーであればありきたりな香りになっただろうし、ミュゲであればファブリック的になったのではと思う。
フランソワ・デュマシーは、オードゥコロンの爽やかさを再考訪し、グレープフルーツフラワーを軸に磨き上げ、ムスキーなセンシュアリティーを注ぎ込んだとのこと。
その結果、ファブリックのように清潔、でもフレグランスらしい表情豊かな、新しいコロンを創り上げたと感じている。