L'ARTISAN PARFUMEUR
MÛRE ET MUSC EXTRÊME(1993年)
調香師:カリン・デュブルイユ
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HP
ラルチザンの人気の香り、ミュール エ ムスク エクストリーム。
和名、究極の黒いちごとムスク。
彼女(勝手にこの香りは女性だと決めつけている)のことを片想いして久しい。正直、振りまわされているな、思わせぶりだなと思う。文学的な表現を使えば「無意識の偽善者」という存在。
そう感じる理由は、私の肌では思ったとおりに香ってくれないから。
でも、うまく香るのではと期待してしまう時もあるから困る。
とはいえ、ムエットで確かめても、実際に肌に合わせてみても、私の前では古臭いメンズの香りの表情を見せるため、例の「世界香水ガイド」にある「フルーティ理髪店」というコメントが一番しっくりくるかもしれない。
ところが、ある一定数の割合で、キレイに香りが立つ人もいる。
たまに街中ですれ違う女性から、とてもしなやかで上質なベリーの香りにすれ違う時がある。可愛らしいキラキラしたベリー系の香りではなくて、キリッとしながらも、ふんわりでなめらかで、でもどこかキュートな独特のベリーの香り。クールとキュートをムスクでやわらかく包んだような、まさに究極の黒いちご!!
ミュール エ ムスク エクストリームは、1978年に発売されたミュール エ ムスク(黒いちごとムスク)のブラックベリーのノートに、カシスをブレンドすることで、フルーティの深みをより立たせた香りにあたる。このフルーティの深みがより立つ点=究極なのにも関わらず、、、。
トップはシトラス・グリーン。
スプレーすると、少しビターなシトラスと、冷たさを感じるカシスの青さ。シトラスはライムリッチで、カシスはフルーティよりもグリーンが強い、シトラスグリーンの香り。このシトラスグリーンがとても爽快で、奥からほんのり香ってくるベルガモット、さらにはベリーの甘さを引き立ててくれるような予感がする。
ミドルはグリーン・フルーティ。
ところが、ベリーの甘さが引き立つ方向に進まず、シトラスの果皮感を増していくことで、よりカシスのグリーンが強調されるような香りになる。このグリーンライムのような香りは、とてもクラシカルなメンズコロンのようにも感じる。
期待していたレッドベリーのスッキリとした甘さはおとなしく、脇役程度のまま。まさにフルーティ理髪店。実際に肌に乗せるとここまでが30から45分くらい。
ベースはフルーティ・ムスキー。
ようやくこのあたりでベリーの甘さが立つのかなと思いきや、冷たいブラックベリーの青さが、クリーミーなムスクと重なり、とても目立ってくる。
さらにオークモスやパチョリの香りが、こちらもメンズらしく香る。
最後はベルベット調の柔らかいムスクの香りが全体を包み込む。
持続時間は4時間くらい。
何度試してみてもクラシカルな雰囲気が強く、フルーティムスキーというよりも、かなりグリーンムスキーな印象が拭えない。ライム、カシス、オークモスのすっきりとした香りが、メンズ感を引き立てているようにも感じてしまう。
気温が上がった方が、甘さが立ってくれる。あともう少し、おとなしくすましているベリーの甘さが立ってくれれば、全体的なバランスが整い、あの究極の黒いちごの香りになるのにと思う。
そこからあらぬ妄想が膨らむ。このフレグランスは、女性だけが持つ特有なフェロモンと化学反応することで初めて、究極の黒いちごになるでは、と。