CHANEL
CHANCE EAU TANDRE EDP(2019年)
調香師:オリビエ・ポルジュ
おすすめ度:★★★★☆
画像:公式HP
シャネルの4代目調香師オリビエ・ポルジュ。彼が創り出したシャネルのレディースのなかで、このチャンス オータンドゥルのオードゥパルファムは特に素晴らしい香りだと思っている。フランカーとして、オリジナル(オードゥトワレ)の香りをリスペクトしつつ、新しい息吹を吹き込んだような、出色の出来栄えではないだろう。そして、個人的にはこれを手に入れてしまうと、もうトワレに戻れなくなるのではと感じてしまう。
トップはフルーティ・シトラス。
スプレーすると、フレッシュなグループフルーツから、マルメロの少しザラザラしたグリーンアップル調の香り。トワレのキャラクターをしっかり残した、みずみずしく爽やかなオープニング。
ミドルはフローラル・フルーティ。
そこからトワレでは、硬めのヒヤシンスグリーンやジャスミンが立ってくるのに対して、オードゥパルファムでは、マルメロのグリーンアップルに似たジューシーな甘さと、そしてローズの甘さ、酸味が香る。さらにジャスミンがフローラル感を増した、爽やかで上品なフローラルフルーティの香り立ちに。
ベースはフローラル・ムスキー。
ローズとジャスミンの甘さと酸味に、少しパウダリーなムスクと、うっすらとバニラの甘さが女性らしさを添える。この淡いバニラとムスクの組み合わせがオータンドゥルらしい。最後はサンダルウッドがフローラルの深みを与えるようにドライダウンしていく。
持続時間は4~5時間程度で、トワレと大きく違わない。前半の爽やかなフルーティフローラルが2時間弱、そこから美しいフローラルムスキーの香りが広がっていく。
爽やかなシトラスやフルーティが全体をリードするような、春夏に似合うに香り。
弾けるシトラス、フルーティのみずみずしい甘さ、フローラルの華やかさ、ムスクの柔らかさ。どれかが飛び出すことなく、バランス良く配置されている。
シャネルのフレグランスは、パルファム、オードゥパルファム、オードゥトワレットのそれぞれ特性に合わせ香料が異なっている。当然、トワレの方が軽めの香料が多く配合されている。
ところが、オータンドゥルに関していえば、このオードゥパルファムの方が爽やかに感じる。
トワレの時間が経つにつれてバニラ、パウダリーなアイリスなどの重めの香りをクリーミーなムスクが柔らかくまとめているような印象に対して、オードゥパルファムはミドルのフローラルフルーティの甘さに爽やかな酸味が効いているため甘ったるくならず、さらにパウダリー感も抑えられ、ムスクも軽い。
近年、特にメゾン系フレグランスでは、レディース、メンズを分けなくなってきている。このオードゥパルファムはレディースでありながら、よりユニセックス寄りの香りに仕上げられている。
マルメロとローズの組み合わせといえば、ペンハリガンのヴァーラ(廃番)を思い浮かべる。ヴァーラのあの華やかなスパイシーローズと比較すると、このオードゥパルファムは同じフローラルフルーティの香りでありながら、もっとフレッシュで明るく、そして可憐で繊細なイメージを感じる。
公式HPを読むと、ココ・シャネルはチャンスと幸運を願うため、生涯にわたって常にサインやシンボルを大切にしていたとのこと。
新たなスタートとなる4月。でもGWが終わってしまうと心身に疲労がたまってくる。じめじめとした梅雨も始まり、憂鬱な気持ちを後押しする。
そんな時、チャンス オードゥパルファムは、フローラルの華やかさと、キラキラな明るさや若々しさを演出してくれる。
春の陽射しに映えるこのピンクゴールド色の香りに包み込まれると、ポジティブな気持ちになれる。
それはお守りのような香り。そして次の新しいチャンスや幸運を呼び込もう。