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ボンド ナンバーナイン:セント オブ ピース フォーヒム

BOND NO.9

THE SCENT OF PEACE FOR HIM(2013年)

調香師:ミッシェル・アルメラック

おすすめ度:★★★☆☆

 

画像:公式HP

 

ボンド ナンバーナインの代表作セント オブ ピース(2006年)。平和への祈りを込めた香りのメンズバージョン。

そして、もし価格との折り合りが付くのであれば、このフォーヒムもお勧めしたい香り。

というのは、これだけフルーティを感じながらも、安易に清潔でライトな香りに着地することを拒み、時間と共に男らしいアロマティック・ウッディが増していく香りは、なかなか見当たらないから。若々しさと男らしさが共存した香りだと思う。

でもこのフォーヒムは、セント オブ ピースのような繊細で嫌みのない香りではなく、爽やかな仮面の下に隠された、男の野性味がしっかりと感じられる香りで、一筋縄ではいかない、好き嫌いがはっきり分かれるのではと感じている。

 

トップはフルーティ・シトラス。

スプレーすると、果実感溢れるパイナップルの甘さを、ベルガモットの酸味でフレッシュに整え、ジュニパーベリーのアロマティック感や少しスパイシーな側面がキリッとした印象に仕上げた香り。

フレッシュなパイナップルの若々しい甘さや、みずみずしいアロマティック感を、スパイシーなグリーンのキレで引き締めたようなオープニング。

 

ミドルはアロマティック・グリーン。

パイナップルの甘酸っぱさを立たせながら、アロマティック感が広がっていく。そこにカシスの芽をすり潰したような、ピリッとしたグリーンやスパイシーの刺激や酸味が男らしいアクセントを添えている。

奥からは、柔らかいムスクとドライアンバーのコントラストが、グリーンに柔らかさと深みを与え、メンズらしい趣きを加速させていく。

 

ベースはウッディ・ムスキー。

パイナップルの甘酸っぱさを仄かに残しつつ、ベチバーでアロマティック感を補っている。グリーンスパイシーの刺激は、ドライアンバーやセダーウッドで厚みを増し、香り全体をムスクで包み込んでいく。

このフルーティな酸味とスパイシーの刺激に、ウッディ、アンバー、ムスクを組み合わせることで、どこかアニマリックで、まるでセクシーな男性の体臭とも取れるようなアクセントとなり、その香りを漂わせながらドライダウンしていく。

 

爽やかなフルーティを香らせながら、ウッディアロマティックがかなり重厚で、8時間以上しっかり持続する。

 

春から初夏にかけて似合う、フレッシュなアロマティックウッディの香り。

 

スプレーしてしばらくは傑作アバントゥス(2010年)彷彿させる。むしろアアバントゥスよりも若々しい印象を受ける。そこから同じクリードで人気を二分するシルバーマウンテンウォーター(1995年)の冷たい印象も寄り添っている。

ところが、ミドル以降はスパイシーがチクチクと刺激してくる。ディオールのソヴァージュにもいる、四川花椒のような刺激。

ソヴァージュではそのペッパーの刺激を漂わせながら、香り全体はソフトになっていくのに対し、このフォーヒムではそこにウッディやアンバーを加えることで、男の深みを増していく。

この刺激がフォーヒムの個性でもあり、苦手な人も多いのではと感じている。

 

平和、平穏、冷静を表すブルーのボトルにボウタイスタイル。

フォーヒムが登場したことで、香りの世界も平和的解決を迎えたとのこと。

 

諸々の事情があり、今は手元にないフォーヒム。

それでもこの香りは忘れがたい。

アドマイザーに分けて残しておいたフォーヒムを隠れて使ってみる。

平和、平穏を保つために、こっそりと。