GUERLAIN
NÉROLI OUTRENOIR(2016年)
調香師:ティエリー・ワッサー、デルフィーヌ・ジェルク
おすすめ度:★★★★★
画像:公式HPより
ネロリウートルノワは、ラール エ ラ マティエールの名に相応しい傑作。
そして、ネロリの最高峰に留まらず、このフレグランスアッセンブルのビック3にしている。
ラール エ ラ マティエールは、稀少な花々と極上の素材への情熱を、大胆かつ感性豊かに表現したコレクション。
このネロリウートルノワも、素材の素晴らしさもさることながら、ティエリー・ワッサーの才能と情熱がほとばしる一品となっている。
そのティエリー・ワッサーはオレンジブロッサムを賛美している。
「爽やかなオレンジの香気を放つネロリ、ウッディで奥深いプチグレイン、そしてオレンジブロッサム アブソリュート。これらを配合し、オレンジブロッサムが持つあらゆる特徴を表現したかったのです」(公式HPより)
ネロリウートルノワは、オレンジブロッサムに魅せられたティエリー・ワッサーだからこそ成しえた、究極のネロリの輝きを放った香りだと思う。
トップはシトラス・グリーン。
スプレーすると、レモンやグレープフルーツの鋭い印象のシトラスと、ペチグレンの強いグリーンノートが鼻を刺す。少し遅れて、ティを思わせるベルガモットのみずみずしい甘さがうっすらと香る。
肌に乗せると、そこにタンジェリンの甘さが増して、キラキラした印象がより強くなるようなオープニング。
ミドルはフローラル・グリーン。
爽やかな甘さのあるシトラスミックスから、一気にネロリのフローラル感が突き抜けてくる。
そのネロリと一緒にペチグレンのグリーンのナチュラル感が重ねると、一瞬、オレンジフラワーのような表情を見せる。
そして、キラキラとしたネロリの輝きのすぐ下から、重厚で柔らかなスモーキーなティーノートが香ってくる。
このスモーキーなティーノートが違和感なくネロリと調和しているのは、ペチグレンの役割が大きい。ティーのような湿り気のあるペチグレンが、ネロリとティーの中間に立つことで、ネロリティという香りが完成されているように感じる。ティーがネロリの輝きを引き立たせ、オレンジフラワーに深みを与えるような、とても存在感のある香りに導いている。
ベースはバルサミック。
ティーやオレンジフラワーがスモーキー感は減退していくが、ネロリの明るさや酸味はしっかり残っている。このネロリのフローラル感に、今度はミルラの濃厚なスモーキー感や酸味、さらにはベンゾインの深い甘さが重ねっていく。徐々にバニラの甘さが出てくるが、オークモスが香りを引き締めることで、甘さに沈むことなく、ミステリアスな樹脂の深みに、どこかさっぱりとしたアーシーな印象を受ける。最後はビターなバルサミックの甘さをムスクが包み込んだままドライダウンしていく。
ミドルの輝くネロリとティーの香りが3時間弱、ネロリの高音を残しながらティーの深みや甘さを加えた香りは6時間近く持続する。
正直、あまり季節を問わない香りだと思う。とはいえ、純粋にネロリの輝きを楽しみたいのであれば春か秋、少しビターなネロリを味わうあれば夏、もう少し甘さが欲しくなる冬は、少量ドゥーブルヴァニーユを合わせると濃厚なネロリバニラの甘さに浸ることができる。
肌になじんだ時のキラキラと輝くネロリの美しさと、スモーキーなティーノートの暗さ。この対比が非常にミステリアスで、魅惑的で、嗅覚を鷲づかみされる。
「華麗なオーラを漂わせる稀少な香りが、心を揺さぶり、感情に語りかけるフレグランス」という説明に偽りはない。
ネロリウートルノワは、感情に語りかけるようなキャラクターを持ちながら、いつでも使うことができる汎用性を持っている。
キャラクターの強い香りの場合、使うシーンが限られるフレグランスが多い。
ビジネスシーンでも使える嗜好性の良さを持ち、他と被らないキャラクター性も持ち、安っぽくない上質感が備わっている香りは、このネロリウートルノワ以外なかなか見つからない。
ネロリウートルノワがラール エ ラ マティエールの最初の1本になったとは必然であり、それ以降まったく飽きることなく、今でも、そしてこれからも使い続けるであろう、最高のフレグランス。