フレグランスアッセンブル

フレグランスの香りの変化を解析するサイト

ゲラン:ロムイデアル コローニュ

GUERLAIN

L'HOMME IDEAL COLOGNE(2015年) ※廃番

調香師:ティエリー・ワッサー

おすすめ度:★★★★☆

 

f:id:captain_dora:20211002150442j:image

 

コロンという名のつく作品のなかで、これだけ優れた香りはなかなかないのではと思っている。

コロンらしい爽やかさと、シトラスに寄りすぎないキャラクター、チャーミングな色気、そして清潔な雰囲気が備わっている香り。非日常を演出する香りのラインナップは豊富だ。でも、当たり前の日常をささやかに彩り、鼻に付くことなくすっと生活に溶け込んでくれるような、使い勝手の良い香りはそうは見当たらず、逆に貴重だと感じる。

 

ロムイデアル コローニュは理想の夫をコンセプトに、理想の夫が持つ3つの魅力「エネルギッシュ」「チャーミング」「誠実」を表現した香り。

ところが発売してわずか4年で廃番となってしまい、今では新品を見つけることが難しい、レアなフレグランス。

 

トップはシトラス・アロマティック。

スプレーすると、爽やかなグレープフルーツや明るいオレンジの甘さを、みずみずしいベルガモットや、さらにはフレッシュなアーモンドがアロマティックに包み込んでいくようなオープニング。

 

ミドルはアロマティック・シトラス。

グレープフルーツの爽やかな余韻を残しつつ、アーモンドのアロマティックな甘さが増し、同時にシトラス寄りのすっきりとしたネロリが合わさることで、どこかレモンティーに近い雰囲気を持ったアロマティックシトラスの香りに。

ムエットでかぐとネロリの青くささが鼻に付くものの、肌に合わせるとアーモンドのアロマティックな甘さが強く出るため、セクシー二歩手前のチャーミングな印象を醸し出してくれる。

 

ベースはアロマティック-ムスキー。

レモンティーに似た爽やかな残香に、アロマティックなベチバーをほどほどに効かせながら、ムスクやクマリンの白っぽさが優しく包み込んでくれる。少しパウダリーな要素もあり、とても清潔に感じる。肌に乗せた方が、クマリンの白い甘さがはっきりするため、清潔というよりも誠実な印象になる。そんな甘さからムスクの白さに移ろっていく流れでドライダウンしていく。

 

爽やかなシトラスから、チャーミングなアロマティック感を経て、ほんのり甘い白さへ、緩やかに変化しながら、3〜4時間持続する。

 

鼻先では常にシトラスの爽やかさがあり、甘さ控えめ、深みなしの香りで、春から夏、まだ暖かさが感じられる10月頃まで似合うのではと思う。私の場合、ほぼ通年使用している。

 

ムエットでかぐと、たとえばネロリがとてもケミカル的であり、アーモンドがカサカサしていたりと、さすがに粗が目立つ。ネットでは7,000円前後で売られていたような、ゲランではもっとも安い価格帯の香りのため、それは仕方のないことだと思う。

肌に乗せるとアロマティックな甘さが少しだけ酒のようにも感じられ、そういう粗はまったく気にならない。

 

それにしてもティエリー・ワッサーはアーモンドの使いの達人だと思う。ありふれたシトラスコロンにアーモンドのアロマティックな甘さを加えることで、控えめなセクシー感が付く。この嫌味のなさに「誠実」を感じられる。まさに洗練された良き夫の香りだと思う。個人的には、ラール エ ラ マティエールの素材を使ったロムイデアル コローニュの香りを見てみたいくらい、好きな香り。


妻から見て、良き夫とはどんな香りだろうか。

石鹸のような清潔な香り?それは味気ない。

とはいえ、たとえば家で大好物のアバントゥスを着ると、家族から猛反発される。

無臭?それは鼻が寂しい。

 

ロムイデアル コローニュは、当たり前の日常に、少しだけ男を感じさせるスパイスを添えるような、完璧な良き夫の香り。