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ルイ・ヴィトン:アフターヌーン スイム

LOUIS VUITTON

AFTERNOON SWIM(2019年)

調香師:ジャック・キャヴァリエ

おすすめ度:★★★★☆

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(公式HPより)

 

ジャック・キャヴァリエは「調香界のモーツァルト」と呼ばれているらしい。

そのモーツァルトを調べてみると、36年の生涯で900曲以上も作曲し、アマゾンで見てみると、何とその大全集はCD170枚組にも及ぶ。けた違いの作曲量で、泉のように湧いてくる曲たちを、必死に楽譜に書き落としていったのではと想像する。

なぜ、ジャック・キャヴァリエがモーツァルトと呼ばれるのかは分からい。でも、もしかするとこの香りは湧いてきた香りのイメージを、そのまま処方として書き落としたのではと思わせるようなフレグランスがいくつかある。ヴィトンでいえば、このアフターヌーンスイムやオンブレノマドやオーアザールがそれに該当するのではないだろうか。

 

アフターヌーンスイムは、2019年4月に一気に3作品が発表された、パルファン・ド・コローニュ コレクションのうちの1品。

パルファン・ド・コローニュは、カリフォルニアを彷彿させるような、オーデコロンの爽やかさと、パルファンの洗練された香りを組み合わせたコレクションで、このコレクションのみ英語名のネーミングが採用されている。

 

このアフターヌーンスイムはその名のとおり、暑い夏の日の午後、海に飛び込んだ瞬間のセンセーションや、肌を洗う波からのエネルギーをイメージした香り。

 

鮮やかな青色のボトルをスプレーすると、

トップはシトラス。

まずスプレーすると、ヴィトンらしいマンダリンのグリーンがかったみずみずしく爽やかなシトラス。その直後、ソルティ感、ピリッとした磯のようなスパイシー感を持った天然のアンバーグリスが香ることで、マンダリンの甘さやみずみずしさが引き立ち、まるで燦々とした太陽の下で、海に飛び込んだときの波飛沫を思わせるような香りになる。

このトップの化粧箱を思わせる青イメージの香りが素晴らしく、それこそ一瞬で西海岸の海辺に誘うようなパワーがある。

 

ミドルはシトラス・アンバー。

マンダリンのグリーンシトラスの香りを残しつつ、ジューシーなシチリア産オレンジと、うっすらとベルガモットの甘さが立ってくる。アンバーグリスは、ソルティな香りから、マリンノートにジャンジャーやナツメグのようなスパイシーを合わせた、少し硬い香りに変化していくため、オレンジのキラキラした明るさと合わさると、まさにビタミンという表現がしっくりくるような香り。

マリンノートとスパイシーな組み合わせたメンズ的な青臭さは、夏以外に使うと少し鼻に付くかもしれない。

逆にこの青臭さが、夏の午後、少しずつ温度を下げていく海水のイメージと重なる。

 

ベースはアンバー。

マンダリンのグリーンやマリンの残香を残したアンバーの香り。少し動物的、でもムスクと比べるとより青い硬さがある。そして、その青くピリッとした硬さのままドライダウンしていく。

 

全体的には硬く青いイメージの香り。トップは波飛沫のように弾けるものの、ミドル以降は波の香りが肌に溶け込むように静かに香る。

トップからミドルが1時間程度で、それ以降は、穏やかな波のような静かな香りが6時間近く持続する。

 

その名のとおり、夏の午後に似合う香りだと思う。ギラギラと乱反射する太陽の下よりも、夏の昼下がり、伸びてきた影の下で、火照った身体を、ピリッと磯の香りやみずみずしさがクールダウンしてくれるようだ。

 

このアフターヌーンスイムのキー素材はなんといっても天然のアンバーグリスだ。

滅多にかぐことができない貴重な天然アンバーグリスの香りが、アフターヌーンスイムでは、ほぼそのまま残されている。

 

コローニュコレクションはカリフォルニア在住のアーティスト、アレックス・イスラエルが、永遠の夏を讃えるのに相応しいポップな色彩を選び、喜びを歌い上げるボトルのカラー&パッケージを描いた。

そして、ジャック・キャヴァリエのクリエーションの出発点はまさにこの色で、色やデザインからイメージを起こしていったとのこと。

おそらく、色やデザインからアンバーグリスを使うアイディアが浮かび、そのイメージに近づけるため、マンダリンやジンジャーで輪郭を整えていったのではないだろうか。

というのも、他の香りと比べると、創り込んだ感がなく、それぞれの素材がのびのびしている印象を受ける。

 

以前は、このアフターヌーンスイムは、ジャック・キャヴァリエの調香が見事というよりも、素晴らしい素材をそのまま使っただけで、もっとも仕事をしていない香りだと思っていた。

ところが使い込んでみるとそれは誤りだったと気づかされる。

アフタヌーンスイムは、人が創り出した芸術の対局にあるような、もともと人が持っていた青や波や海などのイメージをカタチにしたような印象を受ける。だから肌にも、空気にも見事に調和する。

精巧に創られた香りと比べる明らかに地味な香り。

いかにも海をイメージできる香りの良さもある。でも、飾りのない、ありのままの海や波を表現した香りは他にはないと思うため、海に繰り出すときには、必ずバックに忍び込ませていく。アフターヌーンスイムの真っ青なボトルを!