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メゾン フランシス クルジャン:アクア ユニヴェルサリス

MAISON FRANCIS KURKDJIAN 

AQUA UNIVERSALIS (2009年)

調香師:フランシス・クルジャン

おすすめ度:★★★☆☆

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画像:公式HP

 

フランシス・クルジャンの代表作アクアユニヴェルサリス。

目をみはるような素材が見当たらないこの香りは、彼の卓越したバランス感やセンスによって、代表作と呼ばれるほどの完成度と世界観を創り上げられている。

 

トップはシトラス。

スプレーすると、みずみずしいベルガモットとレモンを絞ったようなすっきりとした果皮の苦み。さらにセドラのグリーンがかった苦みが増していくが、遅れて香るベルガモットの甘さが、そのグリーンの苦みを冷たさとして上手にまとめているようなイメージ。

 

ミドルはフローラル。

トップのシトラスグリーンの苦みを残しながら、透明感のあるオレンジフラワーと、青っぽい硬さのあるミュゲが香る。フローラルの明るさ、キリッとした清潔感でまとめたような香り。

 

ベースはムスキー・ウッディ。

シトラスグリーンの残香や硬いフローラルに、粉っぽいムスクが重なっているく。この(イソイースーパー的な)ウッディムスクだけみると、ファブリックな印象で安っぽい。ところがここに甘いアンバーを加えることで、ムスクに艶感や厚みが出て、上質なリネンのような清潔な白い香りに様変わりする。そして、このリネンを思わせる香りのままドライダウンしていく。

 

トップこそ苦みが強いが、その後はキリッとした白イメージのシングルノートに近い香りが4時間くらい持続する。

 

爽やかなシトラス、硬いフローラル、白いムスク。それらの香りの鼻先に、キリッとしたグリーンを立たせることで、終始凛とした清潔な表情を見せるため、春や夏の晴れた日中に似合う香りだと思う。

さらにその清潔感を、上質なリネンのような白い香りで包み込むのだがら、トップのシトラスの苦みを除けば、この香りを嫌いな人などいるのだろうかと感じてしまうくらい、嗜好性の高い香りだと思う。

 

私としてはこの凛とした雰囲気がとても好みで、スタイリッシュなオンタイム向きの香りとして重宝している。オンタイムに求める香りは、キリッとした印象、安っぽくない清潔感、そして鼻につかない程度の個性で、そういった面でこのアクアユニヴェルサリスは使いやすい香りだと思う。

 

フランシス・クルジャンが織り成す、繊細なバランス感とセンスを駆使した香りは、その繊細さが逆に仇にもなってしまう。

アクアユニヴェルサリスで使用されている天然素材は、カラブリア産ベルガモット、シシリー産セドラとあり、繊細であるがゆえに、この天然素材ならではのブレが、香り全体に大きく影響してしまうと感じる。

ベルガモットの甘さが強いときはフルーティ感が出過ぎてしまい、セドラの苦みが強いときは洗濯糊のような乾いた硬さが出過ぎてしまう。

個人的にはセドラが強い方が好みであるが、こればかりは買ってみるまでわからない。