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ジョー マローン:イングリッシュペア―&フリージア

JO MALONE LONDON

ENGLISH PEAR & FREESIA COLOGNE(2010年)

調香師:クリスティーヌ・ナジェル

おすすめ度:★★★☆☆


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画像出典:公式HP

 

ジョーマローンのフレグランスのなかで、性別、年齢関係なく高い人気を誇るイングリッシュペア&フリージア。ジョーマローンといえばこの香りと言えるような、不動の人気No.1。

私自身も、初めてジョーマローンの店舗に行き、初めて手にしたジョーマローンのフレグランスが、ご多分に洩れずイングリッシュペアー&フリージアだった。

 

イングリッシュペア&フリージアの香りは、なぜここまで万人受けするのだろうか。

 

トップはフルーティ・グリーン。

スプレーすると、爽やかなペアというよりも、メロンの皮を思わせる、えぐみを効かせたフルーティグリーンのペアが香ってくる。どこかピンクペッパーのようなピリッとしたスパイス感が、ペアの青っぽい甘さを助長しているようで、正直、あまり心地よい幕開けではない。

 

ミドルはフローラル・グリーン。

このトップの青さをしっかり残したまま、さらに硬質なグリーンを効かせたフリージアやローズが香ることで、一気にフローラル感がボリュームアップしてくる。そしてトップから連なる青さよりも、このフリージアとローズが優位になった瞬間。このカチッとした清潔感、爽やかさ、さらにはナチュラル感が備わったフローラルの香りは、とてもバランスが良く、魅力的な香りだと思う。

 

ベースはウッディ・ムスキー。

しかしながら、このフローラルが減退してくると、やや香調が崩れていく印象を受ける。ナチュラルなフローラルを演出していたルバーブの青辛さや、パチョリの生臭さを、ドライアンバーやムスクで力技でまとめ上げたような香り。

特にトップに逆戻りしてしまったような、パチョリとアンバーのえぐみのある香りは、熟れたてのみずみずしいペアではなく、食べ残した後の、乾燥したペアの芯のようで、あまり好みではない。このペアの残香のような香りのまま、ドライダウンしていく。

 

肌に重ねると、ミドルのみずみずしいフローラルグリーンまでが1時間くらいと短く、このえぐみのあるベースは4時間近く持続する。

 

公式HPでは「秋のエッセンスを凝縮したよう」な香りとうたっているが、グリーンが効いているため、秋はもちろん、個人的には春から梅雨前くらいに出番が多い。

 

イギリスでは、洋梨(ペア)はリンゴと並ぶ人気の果物で、秋から冬にかけてが旬の季節であるが、ほぼ1年中出回っているらしい。

そんなイギリスの果樹園で収穫した熟したての洋梨とフリージアを合わせた香りは、一般的なフルーティフローラル系よりも甘さが抑えられ、さらにナチュラル感もある、とても使いやすいフレグランスだと思う。

 

クリスティーヌ・ナジェル(現エルメス専属調香師)は、とにかく香りの印象付けが巧みだ。

このイングリッシュペア&フリージアの細かい部分を眺めていると、青臭く、えぐみがあり、カサカサする部分があり、その部分のみをフォーカスしてしまうとあまり嗜好が良くない。

ところが、香り全体で見てみると、逆にそういうアラが、フルーティにナチュラルな印象を、さらにフローラルにカチッとしたキャラクターを与え、何となく英国らしい雰囲気としてまとまっている。

で実際に使ってみると、とても使いやすく、香りも分かりやすく、それでいて既視感もない。

 

例えば、男性的なイメージは出したくない、でもカチッとした香りを身につけたい、さらにそこそこの嗜好性は押さえたい時など、決まって手を伸ばしてしまう不思議な香りで、重宝する1本なのではと感じる。