DIOR
FOREVER AND EVER(2009年)
調香師:フランソワ・デュマシー
おすすめ度:★★★☆☆
画像:公式HPより
私が勝手に抱いているディオールのイメージは、ジャドールでもミスディオールでもなく、フォーエヴァーアンドエバー。フォーエヴァーアンドエバーは、ディオールのイメージをそのまま香りとして体現した作品。
学生の頃、初の海外旅行の時、免税店にて、キリキラしたディオール売り場に行き、ドキドキしながら、当時付き合っていた彼女へのお土産を買った。フォーエヴァーアンドエバーは、その時の売り場の匂いや心境とシンクロするような、若かりし頃の思い出が詰まった香り。
そして、フォーエヴァーアンドエバーは元々、2002年に免税店限定品として発売されたが、人気があったためか、2006年に定番になった作品で、そのコンセプトは、ピンクのボトルに秘めた、永遠の愛を約束する香り。今のバージョンは2009年にリファインされたもの。
トップはフローラル。
スプレーすると、いかにもかよわく繊細なフローラル感に、みずみずしいグリーンをほんのり添えたフリージアを、うっすらとムスクで白イメージに整えた香り。可憐という言葉がぴったりはまる。
ミドルもフローラル。
ジャスミンに押し出される形で、フリージの香りがはっきりしてくる。ふんわりとした可愛らしさと、凛としたグリーンがとても初々しくも感じる。
このフリージアが儚くも散っていくと、奥からハニーのようなコクのあるジャスミンが香ってくる。グリーンの余韻が重なることで、大人っぽさとみずみずしさが交錯したような香り立ち。
ベースはフローラル・ムスキー。
ジャスミンのコクが収まってくと、フルーティなローズが、少しずつ可愛らしい印象に戻していく。そんなフローラルフルーティな香りを、セダーウッドやバニラのパウダリー感や、クリーミーなムスクが包み込んでいきながら、ドライダウンしていく。
持続時間は3時間くらい。儚げなフリージアから、ジャスミン、ローズムスクへと水彩画のように移ろうライトフローラルが、最後はボディソープのような清潔な香りへと進んでいく。
香りをみてみると、ブーケ感というよりも、朝露に濡れた採れたての1本のフリージアが、時間の経過とともにフローラル感が増し、クリーミーなピンク色に染まっていくような香り。
ジャスミン、ローズがそれぞれ主張しすぎず、フローラル以外の香りがほとんど見当たらない、とても女性らしい香り。にもかかわらず、似たような香りのフレグランスもないため、長年人気があるのではと思う。
この絵に描いたようなピンクイメージと、フレッシュなグリーンの組み合わせが春を、そして儚い香り立ちがどこか桜を連想させる。メゾンクリスチャンディオールのサクラよりも、むしろこちらの方がしっくりくるのでは。
春は出会いと別れと季節。新しい出会いに胸が高なり、辛い別れに胸が締め付けられる。
その出会いは永遠の始まりなのか。
それとも。