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トムフォード:ウード ウッド

TOM FORD

OUD WOOD(2007年)

調香師:リシャール・エルパン

おすすめ度:★★★★☆

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画像出典:公式HP

 

もっとも使いやすいウードの香り。

現在に続く、ウードブームの火付け役ともいえる、トムフォードのウードウッド。以後、様々なウードフレグランスが登場し、それらの香りをチェックしてみると2つの点に気づく。

まず、トムフォードのウードウッドはその名前ほどウードの香りではないこと。

そして、トムフォードはウードフレグランスの本質を的確に捉えていること。

ウードウッドはウード好きから見ればウード感が薄く、かなりディフォルメされていると感じるのでは。

一方で、ウードの香りをファッションとして考えると、これほど優秀なウードフレグランスはなかなか見当たらない。

 

トップはスパイシー・ウッディ。

スプレーすると、セロリに似たウォータリーなカルダモンや、ピリッとした花椒のスパイスミックスが鼻を突く。奥からはローズウッドの乾いたウッディ感や、アーモンドのようなアロマティックな甘さも感じられる。

 

ミドルはウッディ・スパイシー。

鼻先はカルダモンや花椒の冷たい刺激を残しながら、ローズウッドの乾いた深みのあるウッディ感、バニラやトンカビーンの白っぽい甘さが強くなってくる。包み込まれるようなウッディの厚み、優しい甘さ、さらにはみずみずしさが合わさった、上品なウッディの香り。

30分くらい経つと、奥からスモーキーで湿り気のあるウードが、白い甘さに包まれたローズウッドを押し上げる形で、冷たいスパイシーが減退していく。

さらにベチバーが香ることで、アロマティックなウッディ感が増して、メンズらしい雰囲気が強くなる。

 

ベースはウッディ・バルサミック。

湿り気が抜けたウードのタール感や、硬いベチバー、バニラやトンカビーンのうっすらとした甘さを、やわらかなサンダルウッドが包み込んでいく。この香りに、アンバーやムスクをほんのりと香らせながらドライダウンしていく。

 

最初の30分は青みがかったスパイシーが強いものの、そこからはトムフォードらしいラグジュアリーでどこかセクシーなウッディが6時間近く持続する。

 

冷たいスパイシーが香るとはいえ、この香りが似合うのは、秋冬の夜。冷たく乾燥した空気に、みずみずしいスパイシーを導火線にして、甘さに包まれた濃厚なウッディが空気に溶け込む過程がとても美しい。

 

ウードウッドは、70~80%がメンズ寄りの香りでありにもかかわらず、女性にも人気のある香り。

男性の場合、ある程度の年齢を重ねると、ゴリゴリなメンズフレグランスよりも、ウードウッドのように男性的なスパイシー感やウッディの深みがありながら、女性に寄り添ってくれるような、甘さややわらかさが感じられる、この肩肘の張っていない雰囲気がとても使いやすい。そしてバランス感覚こそが、ウードをファッションフレグランスとして完成させたトムフォードのセンスなのではと思う。

 

そして、特にウードの丸みを帯びたスモーキーなウッディは、ラグジュアリー感だけではなく、フォーマル感も高めてくれる。間違いなくスーツに似合う香りで、ウードウッドを着るだけでスーツの質がワンランク上がるのでは。