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ルイ・ヴィトン:ニュイ ドゥ フ

LOUIS VUITTON

NUIT DE FEU(2020年)

調香師:ジャック・キャヴァリエ

おすすめ度:★★★★☆

 

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画像:公式HP

 

ヴィトンのオリエンタルパフュームは、中東における香りの伝統に基づき、最も象徴的で贅沢な原材料であるウードを使用したコレクション。

 

希少なウードの香りを愛する人のための香り、一作目オンブレ ノマド。

ウード、ローズ、アンバーグリスのコントラストで砂漠の朝を表現した、二作目レ サーブル ローズ

そして、三作目のニュイ ドゥ フ(火の夜の意)は、夜の静寂に包まれた砂漠を照らす焚き火をイメージした香りとしている。

 

このオリエンタルコレクションは、作を重ねるにつれて、ウードが前に出なくなってきている。ウード好きには物足りなく感じるかもしれないが、逆にこれほど使いやすいウードの香りはそうないのではと思う。

 

トップはウッディ。

スプレーした瞬間、焦がした煙、さらにはアニマリックなウードの香りが立ち昇る。良くいえば柔らかな温もりの香り、悪くいえば動物臭いクセのある香り。

 

ミドルはウッディ・バルサミック。

10分くらい経つと、まるで霧が晴れるかのように、その動物臭さがパッと抜け、ウードの深みにオリバナムのクリーミーな酸味や甘さが絡み合った、静寂なウードの香りが広がっていく。

鼻先ではオリバナムは冷たい酸味を漂わせ、肌の近い部分ではウードの暗い木々の厚みや湿った甘さが寄り添っている。暗いウードから放たれるオリバナムの酸味は、まるで闇夜を照らす星の光のようで、そのままボトルの色イメージがダイレクトに感じ取れる。

そこから、インセンスの焦がした苦みがゆっくりと香ってくる。

 

ベースはバルサミック・レザリー。

やがてオリバナムの酸味が収まってくると、鼻先はインセンスの焦がしたウッディの香ばしい香り、奥からはオリバナムのクリーミーな甘さや、ウードの湿り気の暗さ、さらにはレザーの柔らかな温もりが香る。

最後はインセンスの焦がした香りを立たせながら、オリバナム、ウード、レザー、ムスクが上質ななめし革として調和するようにドライダウンしていく。

 

最初こそウードの野性味が強く、かなり個性的に拡散するものの、そこからは静寂で神秘的、さらに焚き火のような暖かみに浸りながら6時間以上する。

 

厳しい寒さを見せる砂漠の夜は、熱砂も満天の星空の下で凍りついている。その暗闇の中で焚き木に火が灯り、小気味よくはぜる音までを表現した香りで、テーマは薫香とのこと。

 

そもそも砂漠の夜の香りとはどんな香りなのだろうか。日中の熱気が急速に冷まされていくため、その大気はまるで呼吸をしているように蠢いているのではと思う。

 

そんな砂漠の空気のように、ニュイドゥフは呼吸するフレグランス。付ける部位、気候によって香り立ちが変わってくる。

ウード、インセンス、オリバナム、そしてナチュラルレザーインフュージョンと天然香料が多く含まれており、さらにそれらの素材がバランス良く配合されているため、その時々によって香りの印象が異なる。

ムエットにように苦み、深み、甘さがバランス良く立つときもあれば、ダンラポーのようなレザーが強く出たり、インセンスの苦みが前に出ることもある。冬の夜、チョコレートに似た甘さを感じる時もある。

 

それでも常に中心にいるのは煙のような焦げた香りだ。はっきり主張してくるスモーキー感ではなく、オリバナムの明るさを照らすことで浮かび上がってくる、ナチュラルな煙の姿。それは暗闇の中で輝く星のよう。その背後からウードの湿った深いぬくもりが寄り添ってくる。

 

こんなソフトで静かなウードはほかに知らない。ウードを包まれながら、それほどウードを感じない。

トムフォードのウードウッドを、ナチュラルで神秘的なベールで仕上げたような香り。