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ルイ・ヴィトン:オリエンタル・パフューム

 

オリエンタル パフュームについて

ヴィトンのオリエンタル パフューム コレクションは2018年に登場し、毎年新作が発表されている(一部日本未上陸品あり)。

またパルファン ド コローニュ コレクションと同様、カラーボトルが採用されている。

オリエンタル パフュームは、ウード(沈香)への頌歌であり、中東に息づく魅惑的な香り文化へのオマージュである。数千年の歴史を持つ香水文化の香り、儀式、伝統に魅了されたジャック・キャヴァリエは、最も象徴的で贅沢な原材料のウードに焦点を当て、ウードそのものの魅力を堪能しつつも、ウードを砂漠、夜、煙などで表現している。

そして、ウードは様々な文化において人間と神を結び付ける自然界の宝であり、深みのある多様な側面を持った原材料であり、ウード自体が旅そのものだ述べている。

画像:公式HP

個人的にはウードの香りは敷居が高く、なかなか日常使いが難しいと感じている(今でも)。

観賞用は別として、実際に使用するのは、例えばトムフォードのウードウッド(2007年)のように、あまりウードが主張してこない香りに限られていた。

そんな私がウードの香りに興味を持ったのは、ヴィトンのオリエンタル パフューム コレクションを知ってからだと思っている。

 

オンブレ ノマド(2018年)

オンブレノマドは、このコレクション始まりの香りだけあり、その完成度は図抜けている。そして、砂漠への旅へと誘うこのデビュー作には、それ以降の作品のすべての要素が詰まっているのではと感じるくらいに。

その香りに魅せられ、山ごと購入したというバングラデシュ産ウードウッド。

このウードの魅力をありのままに、さらにはかぐ者を熱狂させるフレグランスにするためにはどうすれば良いか。そうやって生まれた作品こそがオンブレノマドだと思っている。

ウードが持つ多面性と神秘性をそのまま引き出すために、ラズベリーを含ませたサフランローズでかぐ人を惹き付け、インセンスを寄り添わすことでウードが持つ神秘性が高まっていく。

時間とともに深まるウードの深みと温もり。漆黒にベンゾインの柔らかな甘みやアンバーの光が差すことで、ウードのウッディ感が砂漠のような景色として描かれている。

ウードの魅力が溢れると同時に、これから繰り広げられるオリエンタルの世界のスケッチを提示することで、かぐ者をこの旅に誘っているようだ。

 

いつかウードの香りにのめり込んでいくその時、真っ先に手に取る香りはオンブレノマドだと思っている。

画像:公式HP

レ サーブル ローズ(2019年)

レサーブルローズとは砂漠の薔薇の意で、光が全くない暗黒の砂漠に、朝日が射した時の輝きをイメージした香り。

このレサーブルローズが登場する前、懇意にしているフレグランススペシャリストの方と「ローズデヴァンとオンブレノマドを重ね付けすると、素晴らしいローズウードの香りが完成する」と盛り上がっていた。とはいえ、時間の経過とともに、華やかなローズがウードの暗さや深みに吞み込まれてしまい、結局、オンブレノマドの香りになってしまったことも事実。

もし、ヴィトンが誇るローズとウードが融合したら。そんな淡い期待に応えてくれた作品こそが、このレサーブルローズだった。

テーマの砂漠に朝日が差し込んだ時の輝きの部分は、ローズだけでは負けてしまう。そこにアンバーグリスの光を与えることで、香ばしいウードの木々が、まさに光り輝く砂のような表情になる。

グラース産ローズドメイ、バングラデシュ産ウード、アンバーグリス。

希少な素材と調香師の技が融合した、いつかいでも魅了される、輝くようなローズウードの香り。


ニュイ ド フ(2020年)

ニュイドゥフとは火の夜の意で、夜の静寂に包まれた砂漠を照らす焚き火をイメージした香り。

個人的には、このオリエンタル コレクションのなかで特に使いやすい香りではと感じている。

ニュイドフではウードの表現が、砂感から煙へと変化している。

そこにインセンス、オリバナム、そしてナチュラルレザーインフュージョンなどの天然香料が、突出することなくバランス良く絡み合うことで、全体的にはとてもソフトなウードの香りに仕上げられている。

ウードのアニマリックなクセが、インセンスやオリバナムと調和することで、薫香のような神秘性が備わり、ウードのウッディの深みがレザーと重なることで、寄り添うような安心感と高級感がある。

夜の静寂、透き通るような冷たい空気のなか、煙のように焦げたウードと、湿った木々の温もり。見上げると無数の星が煌めている。

ウードに包まれながらウードを感じないような、そっと癒される香り。

 

ピュア ウード(2021年)

日本未発売のピュアウード。日本で発売されれば、おそらく20万円くらいの価格設定になると思われる。

まじりけのない純粋なウードとはどんな香りなのか?

かいでみたい、、、でも買えない。

 

画像:公式HP(UK)

 

フルール デュ デゼール(2022年)

フルールデュデゼールは砂漠の花の意。3つの花へのオマージュであり、その中心に砂漠を置くことで、花々の色彩の豊かさを表現した香り。

その香りを一言でいうならば、砂漠の上に広がっていく花の乱気流。

ジャスミン、ローズ、オレンジフラワーが嵐のように舞い、いつかいでも魅惑的だ。ハニーの甘さや、エキゾチックなスパイシーが、フローラルの色彩をより鮮明にすることで、まだ見ぬ中東の世界に思いを馳せる。

逆に、フローラルが舞った後のウードの表情は、まるで白い砂のようで、とても静かな香り。オリエンタル コレクションのなかで、もっともウード色が弱く、ウードというよりもエキゾチックなフローラルの香り。まさに、東洋のさまざまな地域からキャラバンでヨーロッパに運ばれた花々へのオマージュという香りに相応しいと思う。