CHANEL
ALLURE EAU DE PARFUM(1999年)
調香師:ジャック・ポルジュ
おすすめ度:★★☆☆☆
画像出典:公式HP
アリュールは、6つのファセットがまとう人によって異なるハーモニーを奏でるという、奇をてらったようなコンセプトのフローラル・フレッシュ・オリエンタルの香り。
体温や体臭、気温や湿度、重ねる場所によって香り立ちが異なるのは当然のような気もするが、なぜ、そのような変化球的なコンセプトにしたのだろうか。
トップはフルーティ・シトラス。
スプレーすると、果皮感の強いマンダリンオレンジと酸味の強いピーチの、とてもフレッシュな香り。少し遅れて、今度はピーチやオレンジの甘さ、さらにはみずみずしいベルガモットが追いかけてくる。ピーチやシトラスが少し派手にも感じられる幕開け。
ミドルはフローラル。
トップの派手な印象を、みずみずしくエレガントなマグノリアや、可愛らしいピオニーがうまく補正していくものの、シトラスを効かせたこちらも派手めのオレンジフラワーが香ってくる。そこにジャスミンやローズやバニラが加わることで、派手な印象に、官能的な甘さや華やかなを添え、女性らしく魅力的に演出していく。
香りの印象としては上から、派手なフローラル、フレッシュなフローラル、甘いフローラルの3層構造のイメージ。
ベースはバルサミック・ウッディ。
バニラの甘さは一定のトーンを保ちながら、少しずつフローラル感が減退していき、アロマティックなベチバーと、セダーウッドが香る。特に、フルーティやフローラルの残香や、ウッディの深みに支えられた華やかで柔らかいバニラの香りが、もっともアリュール(魅力的)に映る。
ほぼ季節を問わない香りではあるが、シトラスやフローラルを、ピーチやバニラの甘さで包んだような香りのため、寒い季節の方が、アリュールの明るさや華やかさが活きるのではと感じる。
ジューシーなピーチの甘さを立たせながら、どんどんフローラルが増し、最後はバニラやウッディに包まれながら4~5時間持続する。
アリュールは、シトラスやフルーティ、フローラルやバニラなど、それぞれの香りのどれか一つが主張しすぎないように計算されている。
さらに、ピーチ、オレンジ、ジャスミンなどそれぞれの素材をはっきりと分かりやすくして、その素材が混ざり合わないように組み立てられている。
そうすることで、その時の体調や気候によって香り立ち方が異なり、フルーティが立ったり、フローラルが立ったり、バニラが立ったりするといった、まとう女性によって独自のハーモニーを奏でる香りが創り上げられている。
逆に取れば、それぞれの香りが主張しすぎてしまい、良く言えば華やかで魅力的、悪く言えば少しケバい印象で、ムエットだとそれがより顕著に感じる。もちろん、肌に合わせるとそんなことはなく、さすがシャネルと思う反面、実際に肌に重ねてみると、体調や気候に関係なく甘めのピーチの強い、シンプルの香り立ちになってしまう。個人的にはマンダリンのフレッシュ感や、ジャスミンのやわらかさや、バニラの甘さがバランス良く香ってくれれば満点で、まさにアリュールだったのに。
シャネルはトワレ、オードゥパルファム、パルファムによって香りが異なる。アリュールであれば断然、パルファムをおすすめしたい。